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<福島町 地域の宝 千軒そば>上 古里元気に 思い麺に込め

 渡島管内福島町千軒の「千軒そばの店」は、昼食を求める客足が絶えない。「盛りそば一つあがりました」。改装した町内会館の広間にせいろに盛られたそばが運ばれ、つやつやと光る。千軒地区のそば粉を十割使った「千軒そば」だ。

■にぎわう店内

 10連休中の3日も、家族連れらがひっきりなし。函館市の主婦中島良佳(みか)さん(46)は「これまでに5回以上訪れた。そばは喉ごしが良く、素朴な店内の雰囲気は居心地が良い」と笑顔を見せた。

 千軒地区は道南の秀峰・大千軒岳(1072メートル)の麓に位置する。町の中心市街から車で約10分。山あいにもかかわらず、連休中は計約600人が訪れた。

 原料のソバを生産し、店を経営するのは、地区の農家ら6人でつくる「千軒そば生産会」(佐藤孝男会長)。昨年は約8ヘクタールにソバを作付けし、3・5トンを収穫した。畑に腐葉土をすきこみ、無農薬で栽培する。

 秋に収穫する実は、廃校になった小学校体育館に運び、送風機を使って約1週間乾燥させる。水分含有量は、ソバの風味を損なわないとされる16%が目安で、石臼でひいて粉にする。

 店は4~12月の週4日、昼時の3時間だけ開店している。地域の農家の女性らがパートで働き、店を切り盛りする。このため、手間と時間がかかる手打ちではなく、店に設置された製麺機で、そばを打つ。

 千軒地区は、標高100メートルほどに集落が広がる。寒暖差があり、夏でも津軽海峡から湿気を含んだ冷涼な風が吹く気候は、ソバ栽培に適している。佐藤会長は「香りが良く、コシが強いソバが育つ」と言う。

■高齢化率64%

 そば文化による地域活性化に取り組む一般社団法人「全麺協」(東京)前副理事長の唐橋宏さん(71)=福島県会津若松市=は、3年前から、千軒そば生産会の活動を支援している。

 石臼製粉を勧めたのは唐橋さん。千軒そば生産会の笹島義広さん(83)は「石臼でゆっくりとソバの実をひくと風味が増す」とうなずく。

 店で出すそばつゆについても、従来のかつお節に加えてサバ節などを使うようアドバイス。コクや深みが増した。唐橋さんは、同会について「そばを使った地域おこしへの強い思いがある」と感じている。

 千軒地区の人口は68人(3月末現在)。65歳以上の割合を示す高齢化率は64%に達した。千軒そばには「何もしなければ地域そのものがなくなる」(佐藤会長)という危機感が詰まっている。

 古里の存続をかけた千軒そばの取り組みが始まったのは、20年前だった。(木古内支局の高野渡が担当し、3回連載します)

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