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樺太アイヌの足跡に光 漫画「ゴールデンカムイ」 描かれた独自文化 現地に名残

 【ユジノサハリンスク細川伸哉】野田サトルさん(北広島市出身)の連載中の人気漫画「ゴールデンカムイ」は、アイヌ民族の少女らが活躍する舞台が明治時代末期の北海道から樺太に移り、樺太アイヌに光が当たる。北海道のアイヌ民族に見られない独自の文化や、日ロ係争のはざまで安住を奪われた歴史は、政府が胆振管内白老町に整備するアイヌ文化復興拠点「民族共生象徴空間(ウポポイ)」でも大きなテーマだ。

 ユジノサハリンスクから約50キロ。オホーツク海に面し、約50軒の木造住宅が並ぶ小さな集落レスノエは、戦前の日本統治時代、落帆(おちほ)と呼ばれた村だ。

 落帆は1905年(明治38年)の日露戦争後、日本が和人の入植をしやすくするなどの目的で、樺太アイヌを集住させた約10カ所の一つ。言語学者の金田一京助が07年、子どもから樺太アイヌ語を学んだ地で知られる。

 48年に移住した長老のリディヤ・ジミナーさん(73)によると、当時は「日本人」が村にいると思っており、「(中でも)先住民族と知ったのは、旧ソ連解体後、日本の研究者らが訪れてから」。現在、戦前の建物はないが、村を流れる川は「オチプハ」と名残をとどめ、夏にカラフトマスが群れをなして遡上(そじょう)する。「私たちも山菜や魚を捕って生活してきた。先住民族とさほど変わらぬ暮らしを続けたのかもしれません」

■ビーズを連ね

 漫画には、北海道アイヌの少女アシリパを追って、主人公の元陸軍兵士、杉元佐一が、落帆を題材にした村を訪れるシーンがある。樺太アイヌの子が紹介する「ホホチリ」と呼ばれる伝統品は、ビーズを連ねた一辺約4センチの三角形の飾り物。男児が前髪にぶら下げたとされ、北海道アイヌにはない独自の文化だ。

 国内で唯一、北海道博物館に現存するホホチリは、落帆生まれの樺太アイヌ、安部洋子さん(86)=川崎市=が9年前に寄贈。同郷の親戚から戦後受け継いだ。「昔は価値が分からなかったが、広く知ってもらえるのは誇らしい」と話す。

■犬ぞりで通学

 安部さんの父方の先祖は1875年の樺太千島交換条約の結果、対雁(江別市)に強制移住、母方はロシア領になったサハリンに住み続けた。同化政策で日本語教育を受けた安部さんに言語は受け継がれずなかった。それでもイラクサで母が織った衣服やサケ皮の靴を身に着け冬は犬ぞりで通学。犬ぞりも北海道アイヌに見られず、漫画の「トホトホトー(前進)」の場面は安部さんの記憶と重なる。

 安部さんは4年前、落帆での生活を記録した「オホーツクの灯(あか)り」を出版。白老町に来年開設する国立アイヌ民族博物館設立準備室の田村将人主任研究員(43)は「落帆は日本化が最も進んだ集落とされていたが、独自の文化が色濃く残っていたことが分かる」と話す。博物館では安部さんが語るビデオを上映予定だ。
★アシリパの「リ」は小文字
★ホホチリの二つめの「ホ」は小文字

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