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きょう憲法記念日 幅広い論点掘り下げたい

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 1947年に日本国憲法が施行され、きょうで72年を迎えた。

 安倍晋三首相は7年前の第2次政権発足以来、改憲を大きな政治のテーマに位置づけてきた。

 それが、ここにきて行き詰まりを見せている。与野党間の信頼関係が崩れ、議論の土台を組み立てることもできていない。

 与党の都合に沿って政治日程を組み立て、政党間の駆け引きで改憲発議・国民投票にこぎ着けようとしているからだ。

 憲法を政争の具にすべきではない。憲法を巡る論点は幅広い。どの条文をどう変えるかの前に、根本的議論を尽くす必要がある。

■政権のおごり表れた

 現在の憲法論議の流れは、一昨年のきょう、安倍首相が「2020年を新しい憲法が施行される年にしたい」と述べ、9条1、2項を残したまま自衛隊の存在を明記すべきだと主張したのが発端だ。

 これを受け自民党の憲法改正推進本部は、首相の意向を踏まえた4項目の改憲案をまとめた。

 流れが変わったのは昨年秋だ。下村博文本部長が、改憲の議論に消極的な野党を「職場放棄」と非難し、猛反発を浴びたためだ。

 新憲法施行までの日程を逆算して、自民案の早期国会提出を図ったが、焦りが裏目に出た。「安倍1強」の下で何でも押し通せると考えたのか。おごりの表れと見ることができよう。

 加えて、自民党案のほころびは隠しようもない。

 自衛隊明記の新設条項は、9条2項の「戦力不保持」の原則と明らかに矛盾する。

 政府が武力行使の要件に掲げる「必要最小限度」という制約がなく、専守防衛を逸脱する疑いが濃厚だ。

 「自衛隊」が他の省庁より上位の組織とみなされ、文民統制が緩む懸念もぬぐえない。

 緊急事態の対応、参院選の合区解消、教育の充実は法改正で対応できる。この中には他の改憲勢力を取り込むために盛り込まれた項目もある。

 やはり自民党案は問題が多い。白紙撤回するのが筋だ。

■「解散権」はどう扱う

 首相の政権運営を振り返れば、自民党案にはない憲法の重要な論点が浮かび上がる。

 首相は第2次内閣発足後、2回衆院解散・総選挙を行った。いずれも、天皇が内閣の助言と承認により国事行為を行う憲法の規定を根拠とする「7条解散」だった。

 しかし、解散は与党に有利なタイミングを見計らって行われた。消費税増税の延期などを理由に挙げながら、政権の延命や改憲勢力の確保を狙う意図がうかがえた。

 首相による「解散権」の乱用ではないか―。そんな批判が野党を中心に出ている。

 憲法を変えて制限すべきか、英国のように法律で縛るかなど、見解は分かれる。国会と内閣の関係を正しく規定する上で、避けて通れない議論だろう。

 忘れてはならないのは1952年、国会の両院法規委員会が「解散は内閣の専恣(せんし)的判断によってなされることのないようにしなければならない」と勧告したことだ。まずはこの基本を確認したい。

 憲法をないがしろにするような政策は後を絶たない。

 歴代政権が違憲としてきた集団的自衛権行使を認める安全保障関連法の施行後、防衛省は「空母型」護衛艦や長距離巡航ミサイルの導入を進めている。

 攻撃性が強い装備であり、専守防衛を逸脱しかねない。

 沖縄県名護市辺野古の米軍基地建設を巡っては、政府が県の反対を無視して埋め立て工事を強行している。憲法に明記された地方自治が有名無実化していないか。

■譲れない三つの原則

 首相は昨年の自民党総裁選に際して改憲を争点化し、「いつまでも議論を続けるわけにはいかない」と、作業を急ぐ考えを示した。

 自らの政権で改憲を実現するためには、合意形成が不十分でも押し通したい。そんな本音が表れたと指摘されても仕方がなかろう。

 国の最高法規である憲法に求められるのは安定性である。

 制定から時間を経て実態に合わない点が生じた場合でも、関連法の整備や憲法解釈の運用で対応することもできよう。

 改憲が必要となった場合でも、憲法の普遍的価値である基本的人権の尊重、国民主権、平和主義の3原則は維持されるべきだ。

 ところが、自民党内には9条の変革だけでなく、国民に対する国の統制を強化すべきだとする議論もある。憂慮を禁じ得ない。

 首相は天皇の退位、新元号の制定に合わせて、新しい時代にふさわしい憲法の制定を訴える。

 求められるのは改憲ありきの議論ではない。憲法のありようを多角的に掘り下げることが大事だ。

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