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<書評>狼の群れはなぜ真剣に遊ぶのか

エリ・H・ラディンガー著

群れで暮らすルールを学ぶ
評 柳川久(帯畜大副学長)

 オオカミは真剣に遊ぶ、らしい。オオカミが遊び好きなのはその子孫のイヌを見ていると、われわれにも十分に理解できる。では、何が「真剣」なのだろうか。

 同じ肉食動物のネコも遊び好きである。イヌ科の遊びも、ネコ科の遊びも、大人になるための一種の「訓練」としての要素が強いが、この両種の目指すところは基本的に異なっている。オオカミなどイヌ科の遊びは、群れの中での社会のルールを教える・覚えるためであり、一方でネコ科は、ひたすらおのれの殺しの腕を磨くための、ストイックな遊びである。

 オオカミの群れはパックと呼ばれ、リーダーの両親と、生後1年から2年の子供、単独のおじ、おばからなる血縁集団が基本である。群れには厳密なルールがある。子供たちはお互いや、大人との遊びを通してそのルールを習得する。本書にはオオカミの群れのさまざまな遊びと、その意義が全編にわたって記されている。生きて行くためのルールを身につける教育としての遊び、そこらへんが「真剣」の意味だろうか。

 また本書には、長年の観察に基づくオオカミの行動や生態、生物学者や心理学者による多くの知見が随所にでてくる。

 例えば、性質は二つに分かれる。タイプAは冒険的でたくましく外交的性格を持つが、よく考えずがむしゃらに行動し、みずからの行動でコントロールできない新しい状況では圧倒され、対応に時間を要する。タイプBの基本的な態度は上品な抑制で、内向的な性格を持ち、まず何が起きるかを見守り、それにうまく順応する。リーダー2頭は必ずといっていいほどタイプAとBの組み合わせで、互いに補完し合っているそうだ。きっと同じタイプ同士の組み合わせでは群れはうまくいかないのだろう。これって、人間社会にもまま見られる状況だと思う。

 最後にオオカミ研究者の言葉を一つ。「歴史上、表面的にはオオカミも女性も抑圧されて来たけれど、実際には強者だね」(シドラ房子訳/築地書館 2700円)

<略歴>
1951年、ドイツ生まれ。91年にドイツオオカミ保護協会を設立し、専門雑誌を創刊

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