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新知事に鈴木直道氏 名実ともに「道民目線」で

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 16年ぶりの新人対決となった道知事選は、前夕張市長の鈴木直道氏が一騎打ちを制し、次の道政を担うことになった。

 鈴木氏は38歳。道政史上では、初代の民選知事となった田中敏文氏に次ぐ30代の若いリーダー誕生である。

 今回の知事選は、政権与党の自民党、公明党の推薦を受けた鈴木氏と、立憲民主党など野党5党が推す石川知裕氏による与野党全面対決の構図だった。

 鈴木氏の勝利で、道政は現職の高橋はるみ氏の時代と同じく保守道政の流れが続くことになる。

 ただ、有権者はこうした政治状況とは別に、鈴木氏の清新なイメージに期待をかけた面もある。

 それだけに、しがらみや前例にとらわれない新たな発想で、難局にある北海道の未来を切り開いてほしい。

■税源移譲こそが本筋

 鈴木氏は、全国唯一の財政再生団体である夕張市のトップを8年間務めた。

 相次ぐ炭鉱の閉山で人口減と高齢化が急激に進み、財政破綻した夕張市の姿を、地方の疲弊が深刻化する北海道の厳しい現実と重ねた道民も少なくなかろう。

 その現場で培った経験は貴重だ。厳しい状況下でも、住民が活力を持って暮らしていける地域づくりを進めてもらいたい。

 鈴木氏は公約で「稼ぐ道政」を掲げ、企業版ふるさと納税などを通じて集めた資金を人口減対策や経済活性化に活用すると訴えた。

 しかし、当初予算で2兆円台後半の道にとって、ふるさと納税がどれほど財政再建に寄与するかは見通せない。

 道財政は、収入から借金返済に充てる額の割合を示す実質公債費比率が全国で最悪の水準にあり、借金である道債の残高が5兆円を大きく超えている。

 自治体間の税収格差を是正し、自由に政策を駆使できる資金を確保するには、国から地方への税源移譲こそが重要だ。

 政権へのお願いではなく、国と地方の仕組みに切り込むような提案を政府に突きつける。そうした自治の確立を目指した積極的な姿勢が欠かせない。

■政府に物申す覚悟を

 気がかりなのは、選挙戦で大きな争点となった二つの問題について、鈴木氏がはっきりとした判断を示さなかったことだ。

 一つは、カジノを中心とする統合型リゾート施設(IR)の誘致だ。「道民目線を大切に早期に判断する」と述べるにとどめ、賛否を明らかにしていない。

 もう一つの北海道電力泊原発の再稼働に関しても、道民の意見を聞いて総合的に判断するとして、是非に踏み込まなかった。

 IRは、賭博のもうけを地域振興に使うことへの疑問が払拭(ふっしょく)されていない。ギャンブル依存症が拡大する心配もある。

 東日本大震災による東京電力福島第1原発事故は、いったん過酷事故が起きれば、地域社会を崩壊させ、元に戻すのが難しい現実を浮き彫りにした。

 一方、安倍晋三政権はIRを成長戦略の柱に据え、原発回帰の動きを鮮明にしている。

 選挙戦の最終日には、鈴木氏と親しい関係にある菅義偉官房長官が応援に駆けつけた。

 鈴木氏が態度を明確にしないのは、支援を受けた政権与党の姿勢が背景にあるのではないか、との見方もある。

 鈴木氏は政権との距離を巡り、「道民目線で、道民第一の姿勢で必要なものは求めていく。必要でないものは『必要ない』と言えばいい」と話している。

 多様な争点がある選挙では、勝利が勝者への白紙委任を意味しているわけではない。

 ましてや、選挙で明言を避けたIRや泊原発の再稼働では、苦しくとも道民と率直に対話を積み重ねることが大切である。

 鈴木氏が強調した「道民目線」は、道議会与党や政権与党の目線ではないはずだ。有権者は、そこに目を凝らしている。

■低投票率防げぬ政党

 道知事選は、統一地方選で行われた11知事選で唯一の与野党対決型だったが、投票率の低迷傾向は変わらなかった。

 与野党の候補選びが迷走した影響は否めない。鈴木氏は自民党の対応が決まる前に名乗りを上げることになった。構図が固まったのは告示の1カ月半前だ。

 候補者の公約提示はさらに遅れた。政策論争を深める時間が足りなかった大きな要因である。

 とりわけ野党側は、IRや泊原発の再稼働といった争点化しやすい課題がありながら、組織力や鈴木氏のイメージを基にした与党側の厚い壁を破れなかった。

 与党を含む各党は、低投票率を重く受け止める必要がある。

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