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「デマだ」というデマ 真実より拡散する時代

 昨年の胆振東部地震での「どうしん電子版」ニュースは、ツイッター@doshinwebで大きく拡散しました。最も読まれた9月23日発信の「被災地支援の液体ミルク使われず」は、現在までに2600回もリツイート(再発信)され、スマートフォンなどで合計137万回表示されています。

 東京都が送ったフィンランド製液体ミルクについて、道が使用を控えるように連絡し、使われないまま保管されているとの内容で、大きな反響を呼びました。

 しかし、同じ日に匿名のツイッターで発信された「北海道地域医療課に電話して北海道新聞の記事の事実関係を確認したら、デマであることがわかった…液体ミルク『国内で使用例がない』『利用控えて』と呼びかけた事実はない」とのツイートは、3倍以上の8000回リツイートされています。その情報を基に記事にしたネットメディアもあり、ネット上では「道新がフェイク(うそ)ニュースを流した」との見方が優勢になったのでした。

 なぜ、現場で取材を重ねて書いた記事を、電話一本で否定した言説が信じられてしまうのか。これが真実がないがしろにされる「ポスト真実」の時代なのか。当時、答えは出ませんでした。

 昨年末、その経緯を冷静に分析した論考がネット上に出ました。「シン・ゴジラ論」などの著書がある札幌出身の批評家・藤田直哉さんの「『それはデマだ!』の主張自体がデマ…という事態にどう向き合うか」(現代ビジネス)です。

 「『〇〇はデマだ』と言われて、多くの人は『な~んだ、そうだったのか』『〇〇を報じたメディアは信用ならない、うそつきだ』と思いがちであるが、『あれはデマだと判明しました』…という、いかにももっともらしい顔をした記事自体がデマだ、というケースが随分と多いのだ」として、液体ミルク報道を巡る言説を追っています。

 藤田さんは結論として、道新の報道は誤報でもデマでもなく、道庁は結果としてデマを流した―と書いています。援用されているのは、共同通信の「支援の液体ミルク千本使用されず」の記事と写真、ネットメディア「ハフィントンポスト」が暴露した液体ミルク使用自粛を呼びかける道の通知文書など他のメディアの報道です。

 こうした検証は、どうしん電子版で自ら手がけるべきでした。藤田さんが書くように「彼らの多くは…漠然と『北海道新聞はデマ新聞』と思い込み、それを確認しあうことで留飲を下げているだけなのではないか」。地道に事実を対置し続けるほかはないでしょう。(メディア委員 高田純一)

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