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完食が重圧「会食恐怖症」 飲み会つらい/吐き気や手の震え/わがままと思われがち

 忘年会や新年会など会食の多い年末年始に、友人や家族らと食事を楽しんだ人も多いだろう。だが、中には人と一緒に食事をするのがつらく、会食の場面を思い浮かべるだけで、吐き気や手の震えを訴えたり、嚥下(えんげ)障害を起こす人もいる。「会食恐怖症」と呼ばれ、心の疾患とされている。症状にどう向き合い、克服すればいいのか。当事者や専門家に話を聞いた。

 「同居する家族とも一緒に食事ができず、いつも一人」。道央在住の20代、まなみさん(仮名)は、2年ほど前に会食恐怖症になった。きっかけは交際相手に食事を「残すな」と言われ続けたことだと振り返る。

 当初は気にならなかったが、忙しさや職場のストレスも重なり、幼いころ通った保育園での完食指導を思い出し、「人と食事をしたり、だれかと食事をすることを考えただけで、吐き気がするようになった」。

 服飾関係の仕事をしていたが、1年ほど前から休職し、約半年間は家から外に出ることもままならなかった。インターネットで会食恐怖症を知り、昨年11月に当事者の相談や支援を行う日本会食恐怖症克服支援協会(東京)の催しに参加し、同じ症状で苦しむ人と出会った。交流会で一緒に食事をすることになり、一口も食べられなかったが、ほかの参加者から「無理して食べなくてもいいんだよ」と言われ、その一言で心が楽になったという。

 現在は1人で外出し、カフェで飲み物を少しずつ飲むことができるようになった。家族との食事や外食の機会を増やし、だれかから「ご飯に行こう、と誘われることが楽しみになる」ことが、今の目標だ。

■胆振東部地震 不安で給食残す女児も

 昨年9月の胆振東部地震以降、学校でみんなと給食を食べられなくなった札幌の小学4年の女児も。学校で「給食を残しては駄目」と指導されていて、40代会社員の母親は「地震で気持ちが不安定になって、一気に食べられなくなったみたい」と話す。

 家では食事できるが、外出先では腹痛を訴えることがある。今は週1~2回食べられるようになったが、食べずに早退する日がある。学校で担任から「来週は2回は食べよう」と励まされるが、家に帰ると「嫌だった」と訴える。

 本人は食欲があり、最近は食べられるものが少しずつ増え、「お母さんの回鍋肉が食べたい」と言えるようになってきた。母親は「無理せず、残してもいい。新学期になったら食べられるようになれば」と見守る日々だ。

 怖くはないが、やっぱり苦手、という人もいる。恵庭市の女性会社員(33)は「職場の昼休みは誰か来る前に急いで食べる。飲み会ではほとんど食べられない」と打ち明ける。ただ、家族や友人との食事は大丈夫で、年末年始は何度か友人と食事した。「家族や友人との食事が楽しいと、職場での会食も、そのうち終わる、と割り切れるんです」

 同協会によると、会食恐怖症は、以前から症状を訴える人は少なくなかったが、あまり知られていないのが現状だ。協会の調査では、当事者の多くが学校給食や部活動などでの「完食指導」がきっかけになったと回答しており、「『食べなければ』という重圧で発症することが多い」と分析する。家族とは食事ができるケースもあるが、「好き嫌いが多い」「わがまま」と思われがちで、家族から「おかしい」と言われ、悩む人もいるという。

 「会食恐怖症は、普段は危険ではない状況に強い恐怖や不安を感じる『恐怖症性不安障害』の一種とも考えられる」。そう話すのは時計台メンタルクリニック(札幌市)の木津明彦院長。本来、楽しいはずの食事が、「嫌な思い出により危険なものと認識してしまい、防御や回避の反応として、吐き気や手の震えなどが出るのでは」と説明する。

 克服手段の一つに「認知行動療法」を挙げる。恐怖の対象に段階的に直面し徐々に慣れることだ。「プールを怖がる人が、洗面器の水に顔をつけることから始めるようなもの」と木津院長。家族や親しい人などの手助けが重要とし、「混雑していない飲食店に行くなど、少しずつ簡単なことから始めるのも手。恐怖が減ると同時に自信が出ることもある」と助言する。

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