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領土問題を考え直す

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 安倍政権は、北方領土問題について新しいアプローチでロシアとの交渉を始めるという方針を打ち出した。四島返還という従来の基本方針を下ろし、二島で決着し国後、択捉については経済協力の深化で実利を取るという方向のようである。

 北海道にとって、この問題はほかの地域よりも重大な意味を持つ。この機会に我々にとっての領土とはないか、考え直す必要があると思う。国家の構成要素は、国民、領土、主権の3つである。古来、領土をめぐって国家間の戦争が繰り返されてきた。国境線を画定することは、平和の基礎である。しかし、未解決の領土問題はナショナリズムを煽る政治的な道具として利用されてきた。

 領土が広ければ広いほど良いという考えは、虚勢を張るだけの愚かな発想である。第2次世界大戦での敗北の結果、日本とドイツは大きな領土を失った。しかし、両国は狭くなった国土の中で経済活動を効率化し、急速に経済発展を遂げた。

 今や、日本は人口減少時代に入り、特に非大都市圏では急速な人口減少が進んでいる。また、財政赤字が膨らむ中で地域を維持するための政策も縮小を続けている。JR北海道に対する中央政府の冷淡な姿勢を見ると、今の政府は北海道を厄介なお荷物と考えているとさえ思える。

 現に日本人が住んでいる地域を冷遇する一方で、人が住んでいない離島の所有をめぐってナショナリズムを煽ったり、他国を非難したりするのは奇妙な話である。また、北方領土については、現にロシアが支配し、ロシア人が定住している。四島すべてを日本に引き渡すということは、近い将来ありえない。実現しないことを延々と叫び続けることにどれだけの意味があるのか。

 歴史を振り返れば、日ソ共同宣言で歯舞、色丹の引き渡しに当時のソ連が合意したとき、アメリカが日ソの接近を警戒し、領土問題の解決に横やりを入れた。以後、日本政府は四島返還という方針を固め、領土問題は未解決状態が永続化することとなった。四島返還という国策は冷戦自体の遺産ということもできる。

 以上のような事情を考えれば、日ソ共同宣言に基づいて二島返還を実現し、国後、択捉については現実的な経済開発や漁業振興で利益を追求するという政策をとることには合理性があると思う。安倍政権がどのような戦略でロシアとの交渉を進めようとしているのか、まだ全体像は分からない。メンツよりも合理性を追求し、ロシアとの関係では領土ナショナリズムを卒業するというのであれば、画期的なことだろう。

 これからの政策課題は、人が住んでいる地域をどのように維持していくかということである。東京オリンピックに続いて2025年には大阪で2度目の万国博覧会を開くことが決まり、高度成長期の夢を追いかけて巨大イベントによる経済活性化を図るのが国策のようである。時代錯誤の極みである。人口減少という社会構造の変化に合わせて、持続可能な地域政策を考えることこそ必要である。北方領土問題の解決も、北海道の地域づくりに役立つ形で、知恵を出すべきである。

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