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<札幌 広がれ 北大牛乳>上 都会の放牧地で伸び伸び

 教室へ急ぐ学生や観光客らが行き交う札幌市北区の北海道大学構内。正門に近い北大百年記念会館内に、昨年11月に開店した飲食店「北大マルシェ カフェ&ラボ」はある。

 店の目玉は、店内で加熱殺菌した「北大牛乳」だ。10月上旬、出張のついでに立ち寄って味わった茨城県の団体職員西原大翔(ひろき)さん(26)は「舌触りが滑らか。普通の牛乳と全然違う」と絶賛した。

■爽やかさ格別

 1杯350円と高価だが、多い日には約40杯出るという。北大OBで、店長を務める宮脇崇文さん(24)は「放牧して育てた牛から搾った牛乳なので、牧草の香りを感じる。爽やかさは格別」と魅力を語る。

 北大牛乳を生み出す牛は、札幌市中心部に近い6ヘクタールの放牧地で飼育される。店から1キロほどで、JRタワーも見える。「そら行け」。学生の声を合図に、搾乳を終えた牛たちが元気よく牛舎から外に飛び出した。

 「牛は屋外が大好き。『世界一地価が高い放牧地』なんて言われますが…」。北大北方生物圏フィールド科学センターの三谷朋弘助教(41)は、そう言って笑った。近隣の地価は1平方メートルあたり約20万円。酪農が盛んな根室管内の牧場と比べ、約3千倍も高い。

 農場は北大の前身・札幌農学校が開学した1876年(明治9年)、初代教頭ウィリアム・クラークの指示で造られた。歴史は140年以上を誇る。

 89年には血統登録されたホルスタインが米国から輸入された。記録が残る中では国内初で、日本の酪農研究の先駆けとなった。人口増加による需要拡大を見込み、当初の研究テーマは乳量の増加策だった。今は「北海道に適した、持続可能な酪農のあり方を研究しています」(三谷さん)。

■循環型酪農へ

 一般的に、乳牛は牛舎内で飼い、餌は牧草に加えて栄養価の高い輸入の穀物も与える。これに対し、三谷さんは輸入飼料に頼らず、広大な土地がある道内の利点を最大限に生かした飼育方法を目指している。

 北大の乳牛は5~10月、牧草地の草を食べて過ごし、冬期間は農場で採れたトウモロコシや干し草を与えられる。ふん尿は発酵させてバイオガスを取り出し、残った液肥を草地にまく。

 現在40頭を飼育しており、うち23頭から搾乳している。1頭あたりの乳量は年間約8トン。1年前までは独自の販売ルートがないため、全量を乳業メーカーに出荷し、他の牛乳と混ぜられて市販されていた。

 「札幌の中心で放牧されて育った牛の牛乳を、市民に飲んでもらえないか」。背景には農場存続への強い思いがあった。(報道センターの内山岳志が担当し、3回連載します)

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