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首相の憲法発言 前のめりで自制足りぬ

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 臨時国会で安倍晋三首相が改憲に前のめりな発言を続けている。

 国会議員に改憲論議の加速を促し、9条に自衛隊を明記することにも強い意欲を示した。

 残された任期の中で改憲を実現したい思いが先走っているように見える。だが、急を要する政治課題は他にたくさんあり、憲法問題を急ぐ必要性は見当たらない。

 憲法改正は国会が発議し、国民投票で承認することになっている。首相が先頭に立って改憲の旗を振ることには違和感がある。

 自らの主張を抑制し、議論を国会にゆだねる姿勢が求められる。

 所信表明演説で首相は、政党が具体的な「改正案」を示し、国民の理解を深め、ともに議論することが国会議員の責任だと訴えた。

 国会議員の責任は、まず憲法を順守することだ。改正も可能ではあるが、必ず果たさなければならない責任とは言えない。

 「制定から70年以上を経た」などの理由で改憲を大前提に掲げ、国会議員に議論を強いるかのような首相の言い分は理解に苦しむ。

 代表質問への答弁では9条への自衛隊明記に関し、「国民のため命を賭して任務を遂行する隊員の正当性を明文化することは、国防の根幹に関わる」と述べた。

 自衛隊の任務や隊員の身分などは自衛隊法に定められている。憲法に書き込まなくても、首相が求める正当性は担保されている。

 野党は、首相が国会に憲法論議を呼びかけることは三権分立に触れると指摘し、99条にある憲法尊重・擁護義務を挙げて首相に自制を求めた。

 首相は「憲法改正について検討、主張することを禁止する趣旨ではない」と反論したが、論点そらしではないか。野党側が求めるのは自制であり、禁止ではない。

 禁止されていないからといって首相が声高に改憲を訴えれば「行き過ぎ」との批判は免れない。

 安倍政権は政府が長年違憲としてきた集団的自衛権の行使を、根拠もあいまいなまま合憲へと解釈変更した。昨年は憲法の規定に基づく野党の臨時国会召集要求に応じようとしなかった。

 こうした憲法軽視が疑念を招いていることを忘れてはならない。

 首相は内閣改造・党役員人事に伴い、自民党の憲法改正推進本部や国会の憲法審査会の幹部を側近で固め、議論促進を狙った。

 しかし、他党との調整は難航が予想される。数の力によるごり押しは許されまい。謙虚で丁寧な対応が欠かせない。

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