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<鹿追 然別湖の案内人>上 自然体験観光の「老舗」

 白いもやがゆらゆらと朝なぎの湖面から立ち上る。大雪山国立公園の南端にある然別湖。秋の快晴の早朝に現れる神秘的な光景だ。

 「この時期は気温より湖の水温が高い。水蒸気が冷えて湯気のように見えるんです」。湖畔に事務所を構える「然別湖ネイチャーセンター」の石川昇司チーフマネージャー(54)は語る。

 然別湖は十勝管内鹿追町の市街地から車で30分。標高804メートル、道内で最も高い場所にある自然湖だ。冬の気温は氷点下35度、夏は30度を超す。周辺は環境保全が義務づけられる第一種・第二種特別地域に指定され、湖固有種のミヤベイワナ、ナキウサギといった希少動物が生息する自然が残る。

■全員が正社員

 1990年設立のセンターはアウトドア・自然体験観光の国内での先駆けだ。全国初の会社組織で、ガイドスタッフ13人がカヌーや森の散策、リバーウオッチングなどさまざまな体験メニューを提供している。

 センターに関する研究論文を書いた北海道二十一世紀総合研究所(札幌)の佐藤公一さん(48)によると、道内の体験観光はラフティングなど夏季に集中し、ニセコなど一部地域を除いて冬の需要は少ない。ガイドの多くは夏場のみの短期雇用なのが現状という。「然別湖のガイドは全員が通年雇用の正社員。地域の自然を熟知し、質が高い。それが顧客満足度の高さにつながっている」と話す。

■台湾出身者も

 10月初旬、台湾のツアー客40人が紅葉の然別湖を訪れた。カヌー体験を案内したのはガイド歴13~30年のベテラン5人だ。メンバーは重さ25キロの2人乗りカヌーを次々と湖畔に浮かべ、数分で全員を湖に送り出した。客がカヌー遊泳を楽しむ間、危険の兆候に目を光らせる。石川チーフは「台湾の人はカヌーそのものよりも写真撮影を好む。安全に写真が撮りやすいルート取りが大切」という。夫婦で参加した張明全さん(65)は「然別湖のような美しい景色は台湾にはない」と満足げに話した。

 新人ガイドも奮闘していた。台湾出身の李育臻(リーユージェン)さん(33)は、台湾客の増加に伴い、ガイドと客の言葉の壁による突発的な事故の発生を防ごうと、今年採用された。

 ヘッドマイクを着けた李さんはカヌーの先導艇に乗り込み、先輩ガイドの指示をマイク音声を通じて中国語で客に伝える。李さんは「台湾から自然豊かな然別湖にやって来て、ヘッドマイクを使うとは思わなかった」と笑った。

 新たな試みを続ける体験観光の“老舗”には、個性的な人材が全国から集う。(新得支局の菊地信一郎が担当し、3回連載します)

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