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<第9部 輪西町かいわい>11 製鉄所と地域の守り神 安全操業、願いの象徴

 新日鉄住金室蘭製鉄所から南東へ向かい、みゆき町の坂を上り始めたところに輪西神社がある。製鉄所の守護神として信仰を集め、現在は地域の氏神となって人々の暮らしを見守る。

■社殿に鉄製の柱

 同所OBで、室蘭地方史研究会の一員として同神社の歴史を調べてきた成田弘さん(72)によると、1919年(大正8年)、当時の輪西製鉄所で建立された神社が起源だという。

 10年後の29年(昭和4年)、製鉄所有志により現在の場所に社殿が移された。日本製鋼所室蘭製作所の守護神社である御傘山神社(御前水町)から大国主命(おおくにぬしのみこと)の御分霊を受け遷座した。さらに安全操業を祈り、火の神である「火之迦具土命(ほのかぐつちのみこと)」を祭っているのは全国の神社でも珍しい。

 珍しさでは社殿も負けていない。輪西神社は73年に宗教法人化し、地域全体の守り神となった。その際、製鉄所が現在の社殿を建設したため、柱には一般的な木材ではなく鉄材が使われている。さい銭箱も鉄製だ。

 宮司の上村章義(ふみよし)さん(37)は昨年7月に亡くなった先代の父勝義さんを継ぎ、今年1月に宮司となった。年4回行われる製鉄所の安全誓願式も取り仕切る。「地域の皆さんの期待に応えられるよう、まい進したい」と表情を引き締める。

■花奴祭りに活気

 神社、製鉄所、地域をつなぐのが、7月の例大祭でみこし渡御を先導する「紀州花奴(きしゅうはなやっこ)」。黒いはんてん、赤い前掛け、青い帯。顔に派手な化粧をした若者が毛やりを持ち「えんやー、えんや」のかけ声とともに独特の振りを交えて練り歩き、祭りを盛り上げる。沿道から「いいぞ」「かっこいい」と声援が飛ぶ。

 成田さんによると、花奴は38年(同13年)に始まったとみられ、今年は80周年。製鉄所の若者が威勢のいい振りを披露し、戦後の全盛期には沿道の家の屋根に上る見物人も続出するほどの人気だったという。

 その後、製鉄所の従業員減などにより、奴の参加者が集まりにくくなり、神社のすぐ近くの鶴ケ崎中(2011年閉校)から生徒を借りてしのぐ時期もあった。危機感を抱いた神社の奉賛会と製鉄所の協力会社などが協議し、08年から協力会社の新入社員らを毎年参加させている。今年は20人が参加した。

 祭りの日、沿道では地域住民がビールや日本酒、ジュースをふるまい、汗だくの奴たちをねぎらう。輪西水原町会の成島真士(まさし)会長(72)は「人口が減り、こんなふうに歓待できなくなった町会もある。でも、できる限りはみんなで輪西を元気にしなきゃ」と笑う。

 拍子木を打って花奴を引っ張る「小頭(こがしら)」を1992年から務めている菅野(すがの)和彦さん(61)=日鉄住金テックスエンジ勤務=は、自他共に認めるお祭り好き。毎年、参加者に振りを教えながら「工場の安全を祈ってきた人々の思いをくんで、一生懸命やってくれる人が出てくれば」と後継者を待ちわびている。

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