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【シリア 帰れぬ祖国】13 水も電気も無い生活

 先月、北海道で大きな地震が起こりました。皆さまが無事であったことを願います。私の家でも少し物が落ちて、グラスも割れましたが、家族はけがなく無事でした。皆さま大変な経験だったことでしょう。電気も水も食べ物も無い生活なんて、想像できなかったのではないでしょうか?

 真夜中の地震で、携帯の緊急アラームが鳴って私は飛び起きました。グラグラと家が揺れて怖くてたまりません。「どうしよう? どうしよう? どうしよう?」と、妻に尋ねることしかできませんでした。彼女は落ち着いて答えました。「ドアを開けて」。あまりの冷静さに、彼女は恐怖を感じるセンサーが壊れているのかと思いました。

 このような緊急事態でも、日本人が落ち着いて対応できることに驚きました。混乱は混乱を生むだけです。シリア人もほとんどの人は穏やかですが、緊急事態が起きたら、残念なことに日本人に比べて攻撃的になってしまう人は多いかもしれません。空き家から物やお金を盗むシリア軍兵士もいます。

 もし電気、水、牛乳がなかったら、我々はどう生きますか? 私の友人は、「何日も牛乳が無い生活は、何てハードなんだ!」と言っていました。私は地震の翌日にスーパーに行き、またいつ起こるか分からない地震に備えて、たくさんの食べ物を買いました。

 地震に準備していなくて困った、という話をしたいわけではありません。皆さんに知って、感じてほしいのは、何百万人ものシリア人が同様に水も無く、電気も無く、恐怖とパニックの中での生活を強いられているということです。1日や2日ではありません。1カ月や2カ月でもありません。何年間にも渡る長い間です。

 日本のように、どこからか水を手に入れることはできません。ひたすら断水が直るまで待たなければならないのです。電気はいつも停電しています。2時間供給され、4時間停電。または、5時間供給されて8時間止まるなど、さまざまな間隔で供給されています。(私が大学生だった時、ほとんど場合は2時間供給、4時間停電でした)。

 物資に関しては、スーパーから食料が無くなることはなかったですが、価格が3倍、5倍と上がっていきます。そんなの買えますか?

 内戦下で人々がどんな生活なのか、さらにご紹介します。家が揺れた時のことを思い出してください。建物が動き、崩れることを考えてみてください。さらに激しい爆発音が加わることを想像できますか?

 地震と爆弾は違います。爆弾の爆発はものすごく恐ろしい音もします。家と建物は確実に破壊され、空は煙や粉じんで真っ黒に染まるのです。

 今、アサド大統領がシリア北西のイドリブの街を爆弾で攻撃しています。アサド大統領やロシア、イランが、ダラー、ホムズ、アレッポ、ラッカの後のターゲットにしています。アサド大統領は、イドリブに反体制派の最後の拠点があり、ここを攻略することが反乱に勝利する最後のステップであると語っています。アサド大統領は内戦の8年間、反体制派と戦っているだけではなく、自分を支持しない国民までも殺し続けています。

 イドリブでの戦闘は内戦の最終局面です。悲しいことに、アサド大統領と彼の腐敗したシステムが勝利しそうです。でも、覚えていてください。たとえ今、アサド大統領が勝利しようとも、いつの日か自由を求めるシリア国民に屈する時が来るだろうことを。(原文は英語)

アスィー・アルガザリ 1992年、シリアの首都ダマスカス近郊のダルアーで生まれる。内戦が始まり、2014年1月に姉夫婦が住むサウジアラビアに、両親らと脱出。その後、インターネットの交流サイトで道内在住の女性と知り合い、結婚を決意する。15年に来日して結婚後、配偶者ビザを取得して道内で暮らし始めた。1年半で日本語を習得し、現在は札幌市内で妻と暮らす。(どうしん電子版のオリジナル記事です。随時掲載します)

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