PR
PR

大停電、札幌市役所揺らぐ 8庁舎機能不全 被害全容把握に遅れ/HP障害、発信できず

 札幌市役所の一部が、道内全域停電(ブラックアウト)という前代未聞の事態に直面して、機能不全に陥っていたことが分かった。地盤陥没などが起きた清田区里塚地区の被害の全容把握が遅れ、市民や外国人観光客への情報提供にも支障が及んだ。胆振東部地震の発生から約1カ月。196万人が暮らし観光客も多い大都市のライフラインを支える要に、課題が残されている。


 地震発生から約3時間後の9月6日午前6時、エレベーターが止まった札幌市役所本庁舎で開かれた第1回災害対策本部会議。秋元克広市長は「市民の安全を最優先し、被害状況の確認を早急にしてほしい」と職員に呼びかけた。だが、地盤陥没など甚大な被害が起きていた里塚地区への言及はなかった。

 同じころの清田区。里塚に近い平岡南小学校では午前6時20分に清田区役所の市職員が避難所を開設し、被災住民が続々と詰めかけた。清田区土木センターは午前4時半ごろには被害情報をつかみ、職員が「道路陥没が著しい」「自宅敷地に土砂が入っている」などと携帯電話で被害状況を逐一、センターに連絡。清田区役所には被害を含めた区内の情報が集まっていた。

■システム動かず

 だが清田区役所ではパソコンのトラブルが起き、庁内ネット回線を使った災害支援システムが起動しなかった。原因ははっきりしないが、停電による影響とみられている。職員たちは固定電話や携帯電話で本庁舎と連絡を取り続けたが、「まとまった情報は送れなかった」(職員)という。

 ある幹部職員は「午前6時の段階では被害の全容が把握できていなかった」と打ち明け、災害対策本部の指揮を執る別の幹部は「水道管破裂などの個別の被害の連絡はあり、大変なことが起きていると分かっていたが、全体像を把握し公表するには時間がかかった」と認める。

■携帯でやり取り

 電源を失った中央区役所や教育委員会なども混乱した。職員たちは暗闇の中、主に携帯電話で情報のやりとりを行った。6日午後3時前までの約11時間半にわたって庁舎機能を失った中央区役所は「避難所に関する問い合わせなどの住民対応はほとんどできなかった」(総務企画課)という。

 札幌市の公式ホームページ(HP)は、地震発生から6日午前10時近くまで閲覧できない状態になった。民間会社に置いている接続機器が停電で停止したためだった。

 市のマニュアルでは、地震発生直後から日本語のほか、外国人観光客などのために英語、中国語、韓国語などでも避難所開設などの情報発信をすることになっていたが、英語での発信ができるようになったのが午後2時ごろ。英語以外の言語での発信は夕方までできなかった。HPのダウンを災害対策本部は把握しておらず、このためもう一つの情報発信手段である市管理のスマートフォン用災害対策アプリ「そなえ」もほとんど活用されなかった。

 そんな中で威力を発揮したのは市のシステムに頼らないインターネットの会員制交流サイト(SNS)。市広報部は地震発生から間もない6日午前3時52分にツイッターで「地震が発生しました。落ち着いて身の安全を守ってください」とつぶやいたのを皮切りに情報を伝え続けた。地震後、ツイッターの読者数は3万人増え10万人になった。

■「備え足りない」

 社会防災学が専門の神戸学院大現代社会学部の前林清和教授は「庁舎にほとんど被害がなかったにもかかわらず停電で市役所が十分機能しなかったのは、備えが足りなかったとしか言いようがない」と指摘。秋元市長は「札幌全域の停電は予想できない事態だった。非常用電源の整備を最優先課題として取り組んでいきたい」と話す。(五十嵐知彦、鹿内朗代)

全文:1493文字
全文はログインまたはお申し込みするとお読みいただけます。
どうしん電子版のご案内
北海道新聞 購読の申し込みはこちらから
新聞配達スタッフ募集
ページの先頭へ戻る