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<遠別 遠農物語 最北の農業高校>上 入学者増へ地域が一丸

 留萌管内遠別町の小高い丘に、生徒数59人の道立遠別農業高校がある。キャッチフレーズは「日本最北の農業高校」。今春、前年より7人多い26人が入学し、町はわいた。1学年の定員40人の65%にすぎないが、統廃合の検討対象となる「定員の50%未満」から4年ぶりに脱出できたからだ。笹川洸志(こうし)町長は「今年の入学式は胸をはって臨めました」と笑顔をみせた。

 遠別町の人口は約2700人。他の過疎地の高校と同様、遠別農業高も入学者の減少が悩みの種だった。町内唯一の高校を存続させようと、学校や行政、町民らが一体となった取り組みは10年ほど前に始まった。

■「魅力つくる」

 「あの時、正直『かちん』と来ましたね」。2009年4月、札幌の琴似工業高教頭から遠別農業高の校長として赴任した菅原修治さん(64)=現在、旭川市在住=は当時を振り返った。着任早々、町職員から「高校が募集停止となることを見越し、校舎を中学校として活用する案が出ている」と説明された。菅原さんは同時に「闘志がわき上がった」という。

 工業高で建築を教えてきた菅原校長にとって農業は畑違い。それでも、着任からわずか2カ月で高校の存続をかけた「活性化プロジェクト」を立ち上げた。「魅力がないなら自分たちでつくる。生徒を管内で奪い合うのではなく、管外、道外から集めよう」。農業高校ならではの魅力をPRする作戦に出た。

■小説自費出版

 旭山動物園と提携し、同園で生徒の動物飼育体験を始めた。10年11月には生徒が生産したもち米やソーセージなどの農産品を販売するアンテナショップを校内に開店するなど、アイデアを矢継ぎ早に実現させた。

 11年には高校を舞台にした小説「羊に名前をつけてしまった少年」を自費出版した。筆者は当時の国語教師、樋口かおりさん(42)=現道立教育研究所研究研修主事=。大学で日本文学を専攻したが、小説は書いたことはない。菅野校長から突然指示され「何しろびっくりした」。

 とはいえ、エピソードには事欠かなかった。登場人物のモデルは実在の生徒たち。学校で飼育する羊と心を通わせ、ひそかに名をつけた男子生徒が、食用に出荷される羊の運命に葛藤する様子と成長を描いた。出版費用は保護者や町民でつくる教育振興会が負担した。テレビや新聞で取り上げられ、話題を呼んだ。

 効果はてきめん。09年に20人だった入学者数は12年は札幌からも含め33人に増えた。だが、菅原校長が転勤すると入学者数は再び低迷する。(天塩支局の福田講平が担当し、3回連載します)

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