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おくりびと、同僚弔う 厚真の笠原さん「また仕事を」

 【厚真】胆振管内厚真町の葬儀会社「厚真公益社」社長の笠原道徳さん(53)は、町内で36人が亡くなった胆振東部地震で、唯一の同僚だった三上昭人さん(54)を失った。犠牲者の葬儀は会場となる寺や会館の損壊などで請け負えなかったが、「三上さんだけは自らの手で」と会社の作業場で悲しみをこらえながらささやかな葬式をあげた。17年間、二人三脚で歩んできた相棒との突然の別れ。「社長と社員の関係じゃない。あんな人にはもう出会えない」

 「生まれ変わったら、また一緒に仕事しような」。地震発生から1週間となる13日。三上さんと母親のとも子さん(79)の葬儀が厚真公益社の作業場で営まれ、笠原さんが手を合わせながら、ひつぎを送りだした。ひつぎには、往年の人気ポップス歌手オリビア・ニュートン・ジョンさんの写真を添え、BGMはヒット曲「そよ風の誘惑」。オリビアさんの熱狂的なファンだった三上さんを思っての演出だった。

 厚真公益社は2人だけの会社。物腰が柔らかく明るい性格の三上さんが葬儀の司会を務め、照れ屋の笠原さんは裏方として葬儀会場の準備を取り仕切った。互いの苦手分野と得意分野を補い合い、深い信頼関係でつながっていた。

 地震に見舞われた6日、笠原さんは、町の施設に設けられた遺体安置所で遺体をひつぎに納める作業を請け負った。だが、相棒の三上さんを呼ぼうにも電話がつながらない。「まさか」。不安をかき消しながら1人で向かった遺体安置所には、袋に包まれた遺体が次々運び込まれ、床を埋め尽くしていた。中では遺体の身元確認をする遺族のおえつが漏れ、現実離れした光景に「夢じゃないか」と何度も脚や腕をつねった。

 人口約4600人のまちで犠牲者の3割は知り合いだ。それでもプロとして感情を押し殺し、遺体をひつぎに納め続けた。そして翌7日、土砂の下から発見された三上さんの遺体が運ばれてきた。

 三上さんは、被害が最も激しかった吉野地区の自宅で、とも子さんと共に土砂にのみ込まれていた。横顔ですぐ本人と分かったが、必死にこらえた。だが、三上さんの妹、秋元晴代さん(51)と顔を合わせた途端、緊張の糸が切れ、涙が止まらなかった。「母親思いだったから、一人で逝かせなかったのかな。彼らしいね」

 笠原さんは、断水が復旧し、寺や会館などの片付けが済めば、10月半ばにも葬儀の仕事を再開するつもりだ。三上さんに代わる社員も雇わなければならない。「本当に優しくていい男だった。彼のような人は二度と見つからないだろうな」と目を細めた。

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