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道内全域停電 なぜ起きた 周波数の急激な低下が原因 交流・直流の変換所 機能せず

 道内全域の停電により、道民生活に大きな混乱を引き起こした今回の胆振東部地震。1951年の北海道電力設立以来初めてという異常事態はなぜ起きたのか。電力のメカニズムはどうなっているのか。元東京大特任教授で、自立可能な電力系統の概念を提唱する阿部力也さんの話などをもとに、三つのキーワードで探った。

 一般的に電気は流れる向きや電圧が一定周期でプラス、マイナスに交互に切り替わる。1秒間で何回繰り返すかを「周波数」と言い、1秒間で50回なら50ヘルツ、60回なら60ヘルツとなる。各電力会社の区域内では一定の周波数を保たねばならない。北電を含む東日本側は50ヘルツ、西日本側は60ヘルツの電気が送られている。明治時代、関東に50ヘルツ、関西に60ヘルツの発電機が別々に輸入されたなごりだ。

 周波数は電力の供給が需要を下回ると低下し、上回ると上昇する。また、周波数は発電機の回転数と比例し、急激に変わると、産業用の電気機器などに影響を与える可能性がある。電力会社が電力の需要と供給のバランスをとっているのは、周波数を安定させるためだ。

 阿部さんによると、一つの電力系統(北海道なら道内全域)の総需要の10分の1の容量の発電機が壊れると、周波数が下がり、停電する可能性があるという。今回の地震発生時、道内の総需要は約310万キロワットだったが、道内の電力供給量の半分を占めていた北電苫東厚真火力発電所(胆振管内厚真町、出力165万キロワット)が一気に止まった。

 阿部さんは「みこしの担ぎ手10人のうち5人が一気にいなくなったようなもの。残った担ぎ手(発電所)の負担が激増して、みこしを投げ出した状態」と例える。周波数の急激な低下は発電機の故障、機能低下につながる。これを防ごうと、他の発電所が連鎖的に停止する「ブラックアウト」が起き、道内全295万戸の明かりが消えた。

 電気には「交流」と「直流」の2種類がある。電流と電圧がプラスとマイナスに交互に切り替わることを交流と言い、現在の電力システムで主流となっている。これに対し直流は、電池をつないで豆電球に灯をともした状態のように、電流は一方通行で電圧もほぼ一定に保たれている。エジソンが発明したのは直流発電機だ。

 ただ、直流は電線の抵抗を多く受け、電気を送る際に電力の損失が大きい。このため、エジソンに続く研究者たちが開発した、より効率的な交流の送電が一般的になった。

 直流送電にもメリットはあり、長距離の送電では、交流よりもコストが低くすむ。津軽海峡の海底を通る送電ケーブル「北本(きたほん)連系線」では直流が採用された。最大容量は60万キロワットだ。

 電源開発(東京)が管理・運用する北本連系線は今回の地震直後、最大60万キロワットを出力したものの、苫東厚真発電所の停止分をカバーすることはできなかった。連系線の両端に、交流を直流に、直流を交流に変換する設備があるが、大規模停電で渡島管内七飯町の「函館変換所」が動かなくなったため、送電が一時的にできなくなった。現在の変換設備は「他励(たれい)式」と呼ばれ、外部電源がないと稼働しないためだ。

 2019年に北電が運用開始予定の新たな連系線(30万キロワット)では「自励(じれい)式」が採用され、外部電源がなくても電力変換ができ、大規模停電時の復旧が速やかになる。しかし、そもそも大規模停電はあってはならない。阿部さんは「北本連系をさらに増強するとともに、総需要の10%程度の出力の発電所を分散配置するよう転換すべきだ」と指摘。また、「(交流の発送電網が張り巡らされている)北海道を、自前の発電所を持った自立可能な中小のエリアに分け、エリアごとに直流を介して北電に接続すれば大規模連鎖停電も防げる」と提言する。(原田隆幸)


 <略歴>あべ・りきや 1953年福島県生まれ。東京大卒。電源開発(Jパワー)に入社。米国電力研究所派遣研究員、Jパワー上席研究員を経て、2008年から東京大大学院特任教授。昨年退職し、現在は新たな電力供給システムを進める「デジタルグリッド株式会社」会長を務める。

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