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<第9部 輪西町かいわい>碁盤目の街 鉄のにおい 繁栄と衰退経験 あすへ奮闘

 鉄のにおいを感じながら、JR輪西駅で列車を降りる。今は無人駅。かつては製鉄所の従業員があふれ、人の流れに逆らって歩けないほど混雑したという。

 往時に思いをはせて市道を渡ると、香ばしい煙が鼻をくすぐる。飲食店街に並ぶのは室蘭やきとりの店。耳に飛びこんでくるのは酔客の笑い声、ご機嫌なカラオケの歌声。細い路地裏には、労働者に愛されたとんかつ店がたたずむ。

 足を進める。鉄のマチを象徴するお土産として愛される人形「ボルタ」の工房で、なんの変哲もないボルトに命が吹き込まれる。すぐ近くには、開局10周年を迎えた地域FM「FMびゅー」の放送局。地域密着の放送が生み出されている。

 マチの中心へ歩く。隣り合う商業施設「ぷらっと・てついち」と室蘭市市民会館は、地域の将来を憂いた商業者たちの努力の結晶だ。そのまま坂を上れば、丘の上に室蘭ユースホステルが建つ。建築家の田上義也氏(1899~1991年)が船を模して設計した、しゃれた白い建物。振り返ると、新日鉄住金室蘭製鉄所の工場群が目に入る。自動車向け特殊鋼の生産基地として、確固たる地位を築いた。

 製鉄所の前に広がる輪西のマチは、整然とした碁盤目。1889年(明治22年)、福岡、佐賀、石川の士族が屯田兵として入植し、苦難の末に開拓した名残だ。

 1965年の国勢調査で1万7682人が住んでいた輪西地区(輪西町、みゆき町、大沢町、仲町)の人口は、2015年には3436人。製鉄所とともに栄え、鉄冷えの影響をもろに受けた。室蘭の歩みを象徴する地域といえる。

 紙面の上段に並べた写真を見てほしい。室蘭やきとりの味を守る店主。ボルタ制作に打ち込むスタッフ。ユースホステルを40年近く守ってきたペアレント(支配人)―。みんな、いい顔をしている。「昔はよかった」と嘆くのは似合わない。地域活性化に力を尽くす人々の姿を追う連載を始めたい。

 室蘭報道部の横山清貴が担当し、5日から本編を始めます。

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