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<夕張支線物語>上 廃線 まちPRの好機に

 ホームに滑り込んだ1両編成のディーゼル列車から大勢の乗客が降り立つ。1892年(明治25年)に開業したJR石勝線夕張支線(新夕張―夕張、16・1キロ)終着駅の夕張駅。来年4月の廃止が決まった3月以降、炭都を支えた鉄路の見納めをしようと、多くの鉄道ファンが訪れる。

松本零士さん協力

 駅をくまなく撮影するファンはホームの壁にもレンズを向ける。美しい女性のイラストに「夕張の鉄路にありがとう」のメッセージが添えられた支線のPRポスター。「銀河鉄道999」で知られる漫画家の松本零士さん(80)の協力を得て、観光事業者や商工会議所などでつくる「ありがとう夕張支線実行委」が製作した。今月から沿線各駅や市内の飲食店などで約50枚が張り出されている。

 北九州育ちの松本さんは高校卒業後、漫画家として成功するまで「戻らん」との決意を胸に東京行きの夜行列車に乗り込んだ。「あの列車に乗らなければ人生は変わっていた。夕張支線でも、いくつもの人生ドラマが紡がれたはず」。かけがえのない瞬間を思い、実行委の依頼に快諾した。

 松本さんは30代の頃から何度か夕張を訪れ、夕張支線の列車にも乗った。山あいに細長く伸びるまちのなだらかな稜線(りょうせん)が印象的だった。「大地の奥行きと斜面、点々とある家。穏やかで美しくて、どこか懐かしさを感じさせる」と語る。「あの平地に宇宙船が停泊できる」「宇宙に入っていくような暗闇だ」…。創作意欲がかき立てられる「すてきなまち」だと感じた。

短い滞在時間
 ただ、夕張には暗い影がつきまとう。市民は長らく「破綻したまち」という負のイメージに悩み続けてきた。それだけに実行委は「今がすてきなまちを取り戻す好機」とみる。

 課題は駅から飛び出す人を増やすこと。夕張駅に降り立つ人は増えたが、多くが8~17分後に出発する折り返し便に乗り込んでしまう。1日5往復しかなく、乗り過ごすと約4時間待たねばならないからだ。

 実行委はイベントやまち歩きマップ製作、各駅でのミニ写真展などを通じ、夕張を懸命にPRする。広報担当で夕張駅前のホテル勤務の倉田智夫さん(43)は「にぎわいを廃線後にもつなげなければ」と力を込める。松本さんも「夕張には独自の歴史がある。まち自体が歴史遺産。そうした魅力を明確に発信しては」とエールを送る。

 夕張駅前に実行委ののぼりがはためく。「夕張始まる」と大文字が躍る。人口が最盛期の14分の1の約8200人に減ったまちの新たな挑戦が始まった。(夕張支局の藤田香織里が担当し、3回連載します)

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