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知床で学生不明1週間 崖伝い難所続き 天気や海況変化

 【羅臼】世界自然遺産に登録されている根室管内羅臼町の知床半島先端部を目指して海岸をトレッキングしていた横浜市の大学生(21)が18日に高波にさらわれて行方不明になってから25日で1週間が過ぎた。知床岬を徒歩で訪れる人にとって、現場付近は難所にあたり、4年前には死亡事故が起きている。地元関係者は「天候や海況を十分に把握を」と警鐘を鳴らしている。

 「波が高く、地元住民なら行かなかった」。地元の小中学生を連れて、現場付近を通って知床半島先端部を徒歩で訪れるイベント、ふるさと少年探検隊で隊長を務める漁業浜屋修司さん(63)は事故当日の危険性を指摘した。

 学生は、友人(22)と18日昼、知床岬を目指して町内相泊(あいどまり)を出発。中標津署によると、学生は午後4時ごろ、相泊から5~6キロ先のトッカリ瀬と呼ばれる岩場で足を滑らせ海に転落。救助しようとした友人も波にさらわれたが、助かった。

 トッカリ瀬は高さ数十メートルの断崖が海に迫り、崖をつたったり、岩礁を渡らなければならない。初めて訪れた2人は事故時、崖伝いに海を背に横歩きする「へつり」と呼ぶ方法で移動したとされる。浜屋さんが隊長を務める小中学生が参加する探検隊は無事故で36回続いている。浜屋さんは「へつりの時には、波をかぶれば大人でも簡単に体を持っていかれる。天気予報と干満を確認し、干潮時に移動している」と話す。

 しかし、羅臼海上保安署によると、事故当時の18日夕は、満潮に向かって水位が上昇する時間帯で波も高かったという。低気圧の影響で北東の風が吹いて大きなうねりも生じ、この日は波浪注意報も出ていた。同海保は「18日に天候は回復してきたが、うねりは残った。2メートルを超すような波が現場に押し寄せていたはず」と話す。

 2人は事故が起きる前日の17日、町内の環境省の情報提供施設「ルサフィールドハウス」に立ち寄り、知床財団職員からヒグマ対策などの説明を受け、2泊3日で半島先端を往復する計画を伝えていた。野営などの装備はしていたが、職員は「波が高い」と延期を勧めていたという。地元関係者は「帰りの航空便とか日程に余裕がなかったのでは」と推測する。

 知床半島先端部は厳しく自然が保全され、登山道などはない。その「秘境」の魅力を求め、年間100~200人が入山する。ただ、今回の現場近くでは2014年9月に江別市の女性=当時(37)=が岩礁を渡る最中に波にさらわれて亡くなっている。

 環境省は半島先端部の難所やヒグマの対処法などの注意点を「利用心得」として紹介し、自己判断、自己責任を求めている。しかし、ルサの施設などで事前説明を受ける割合は5~8割にとどまる。羅臼自然保護官事務所の守容平氏(27)は「現地を知る職員の説明を聞き、十分な心構えで出発してほしい」と訴える。羅臼山岳会の涌坂周一副会長(65)は「知床では海と対峙(たいじ)する姿勢が求められる。危険を感じたらやめるのが基本」と強調した。(古谷育世、森川純)

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