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議論の木

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「おまえの指をくわえている人の頭を殴ってはいけない」。アフリカのガーナにはそんなことわざがあるという。殴ればその勢いで自分の指をかみ切られるかもしれない。いさかいの中にあっても、人と人とはつながっているという戒めだ▼先ごろ死去したガーナ出身のコフィ・アナン元国連事務総長は、この言葉を聞いて育った。著書「介入のとき」にそう記している。「議論の木」という概念も、ガーナ人の伝統として紹介している。会って話し合い、妥協と解決を図り、差異を認めつつ統一をはかる場所を意味する。無数の部族の平和と調和に必要なことだ▼国連はまさしく「議論の木」だったのだろう。米同時テロからイラク戦争に至る米国の単独行動主義を厳しく批判し、多国間の話し合いによる問題解決を主張した。日本に対しても、多国間主義を支持する国として期待を寄せた▼最もリーダーシップを発揮したのは貧困撲滅に向けた2000年の国連ミレニアム開発目標(MDGs)である。「平和は戦争がないだけでは不十分で、開発による真の発展があってこそ実現する」と訴えた▼念頭にあったのはアフリカの自立。何世紀にもわたる部族対立と植民地支配に苦しんだ歴史の知恵や教訓を、平和な世界の構築に生かそうとした▼いま、国際社会では自国第一主義が横行する。それだけに、アナン氏の理念が一層輝いて見えてくる。2018・8・26

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