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<第8部 卸売市場かいわい>6 老舗豆腐店 大豆の味生かす製法

 出来上がったばかりの無数の豆腐が、冷たい水の中で白く輝く。工場の従業員が慣れた手つきで、1丁ずつパックに入れていく。

■余分なもの排除

 老舗豆腐店「ないとう本店」。室蘭市公設地方卸売市場に近い日の出町に工場と店舗を構え、豆腐だけで1日約2千丁製造する。

 一口食べると、大豆の風味がふわっと広がる。

 大豆をすりつぶし、煮る過程で出る気泡を消す「消泡剤」を使わない製法を1985年、道内でいち早く取り入れた。手間はかかるが、できるだけ余分なものは入れたくない。

 日持ちさせるための再加熱処理もしていない。

 「うちの豆腐は大豆の味がしっかりわかる」と、3代目社長の内藤勝彦さん(79)。町の商店から室蘭を代表する豆腐製造・販売会社に成長させた立役者だ。

 油揚げ、こんにゃく、ところてんなども作り、現在は、主に西胆振のスーパーや学校給食、登別、洞爺湖のホテルに卸している。コープさっぽろ東むろらん店(寿町)の今野雄一店長(48)は「こだわって作っているので、少し高くても根強い人気がある」と話す。

■21歳で跡継ぎに

 祖父母が1921年(大正10年)、御前水町で創業した。内藤さんは長男で、子どもの頃から豆腐作りを手伝っていたが「継げ」と言われたことはなかった。

 日本大文学部(当時)に進み、東京で学生生活を送っていた4年生の時、父勝巳さんが肺がんで他界した。3人の妹と弟がいた。「扶養する家族がいる。自分がやらなければ」と決意。大学を中退して室蘭に帰り、21歳で店を継いだ。

 やるからには、「大きな会社にしたい」と誓った。卸売市場が開設した1968年、「今後は市場周辺が中心地になる」と考え、工場を日の出町に移して規模を拡大した。従業員も5人から約20人に増やした。翌69年、株式会社にした。

 一方、営業は素人同然。先代からの得意先に毎日のように通い、新規のスーパーでは社長に何時間も味へのこだわりを説いた。

 「(地元スーパーだった)コープクレアの理事長に『(豆腐の扱いを)全部任してやる』と言われたときのことは忘れられないね」と、懐かしそうに振り返る。品質の良さと、小売店の要望に細かく応える機動力で、徐々に取り扱ってくれる店は増えた。

 3年後には創業100年を迎える。だが、室蘭の人口減少は歯止めがかからず、商売の環境は厳しくなるばかり。それでも内藤さんの情熱は変わらない。

 「地味な商品だけど、新鮮でおいしいモノを、という基本を変えず、お客さんに喜んでもらいたい」

豆知識 内藤勝彦さんから

 ■豆腐の作り方 暑い日に自家製豆腐で冷ややっこはいかがでしょうか。一晩水に漬けてふやかした大豆1カップに水240ccを入れてミキサーで砕きます。これを煮て、こすと豆乳ができます。にがり、もしくはお酢を小さじ1ほど入れると固まっていきます。冷ましたらできあがりです。豆乳に抹茶やゴマを入れていろいろな種類を作ってみても楽しいです。豆腐を作れる豆乳もお店で購入できるので、使ってみるのもいいですね。

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