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<第8部 卸売市場かいわい>5 おかず屋 早朝仕込む家庭の味

 外は暗く、まだ涼しい午前3時。総合卸センター(室蘭市日の出町)内の総菜店「うめや」の調理場は熱気に包まれていた。

 「ふぅ。暑い」と言いながら、店長の梅木公子さん(70)が調理の手を忙しく動かす。量り売りのきんぴらゴボウやマカロニサラダ、黒豆を次々と大皿に、ザンギやイワシのフライはパックに盛り付けていく。

 朝日が横から差し込んできた。約20種類のおかずを作り終えた午前5時半、なじみの客が顔を出す。

■20種の総菜作り

 港北町で鮮魚店を営む大山口光子さん(74)は、室蘭市公設地方卸売市場で競りが始まる前に立ち寄った。「ここはおいしくないモノはないんだよ」と、里芋の煮物を手に取った。

 客の年齢層が高く、味付けはあっさりめ。茶わん蒸し1個160円。手軽に買える「家庭の味」が魅力だ。

 伊達市大滝区の商店経営、草野善治さん(67)は段ボール1箱分を買い込んだ。うめやの総菜を店で販売しているといい、「どれもおいしいから、お客さんも喜んでくれるんだ」と毎朝仕入れにやってくる。

 公子さんは室蘭生まれ。両親が共働きで、小学校高学年から自然と魚を焼いたり煮たりするようになった。

 「小さいころから食べるのが大好きでね。いつも、何か食べたら『どうやって作るんだろう。試してみよう』ってやっていたんだ」と振り返る。

 店を持ったのは2006年。中学卒業後、事務などいろいろな職についた。45歳のころ、総合卸センター近くの丸三市場内の仕出屋でアルバイトを始めた。

 50代半ばで店主から「店を買い取り、自分で経営しては」と誘われ、引き受けた。当時会社勤めだった夫吉宏さん(70)も「やってみれば」と後押しした。

 2年後の08年、店名を「うめや」に変えた。12年に丸三市場の閉鎖が決まり、現在の場所に移った。今は定年退職した吉宏さんと二人三脚で切り盛りする。「良くても悪くても、客の反応がすぐにわかるから面白い」と笑顔を見せる。

■毎日思い込めて

 ただ、さまざまな業種の約40店が軒を連ねた丸三市場時代と比べ、「初めての人が来なくなったね」と少しさみしげに言う。

 作る量も減った。毎日6キロ作っていたザンギは、今では2キロになった。「でも私たちも年だし、これくらいができる範囲かな」

 正午前、売り場はからっぽになった。翌日の仕込みも終え、吉宏さんの運転で帰宅する。

 体に疲れが残っていても「待っていてくれるお客さんがいるから」。

 毎日思いを込め、おかず作りに励む。

■豆知識 梅木公子さんから 茶わん蒸しの作り方

 一番大事なのは、だしをしっかり取ること。うちはカツオと昆布を使っています。3人分なら、だしカップ1杯ほどと卵2個。かき混ぜたら必ず裏ごししてください。クリの甘露煮の汁で自然な甘みがつきます。クリが苦手な方はガムシロップで。少し甘いくらいがいいです。具はお好みで。15分ほど蒸したら出来上がり。蒸し器がない場合は、お鍋にお湯を容器が半分隠れるくらい入れて沸かせば大丈夫。一度覚えたら意外と簡単な料理です。

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