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根室との観光ツアー定着

チャシ跡人気 釧路にも

 これまであまり注目されてこなかった釧路市内のチャシ《砦(とりで)》跡への訪問者数が増えている。昨年度はツアーで訪れた人が前年度の8倍に増えた。「日本100名城」に選定されて以来、人気になっている根室半島チャシ跡群とともに回るツアー客が増えていることが要因だ。関係者は「根室との相乗効果で、釧路のチャシ跡についても多くの人に知ってもらえれば」と期待を込める。(今井裕紀)

受け入れ態勢の整備課題

 「当時のアイヌも、この景色を見渡していたのかな」。7月上旬、札幌からのツアー客14人が18世紀に築かれたとされる釧路市城山のモシリヤチャシ跡を訪れ、頂上からの釧路川下流を一望する景色に歓声を上げた。

 モシリヤはアイヌ語で「川の中にある島の対岸の丘」の意味。チャシは標高約18メートルの丘を利用してつくられており、深さ約6メートルの壕(ごう)を備える。アイヌ同士の戦いの場になったとされている。

 釧路市埋蔵文化財調査センターによると、釧路市内にあるチャシ跡は18カ所で、モシリヤチャシ跡とチャランケチャシ跡が国指定史跡。昨年度、ガイドつきのツアーで訪れた人は前年度の8倍増の約400人に達した。同センターの高橋勇人学芸員は「根室のチャシ跡を巡るツアーの日程に釧路のチャシ跡が組み込まれることが多く、相乗効果で訪問者が増えている」と説明する。

 根室のチャシ跡が注目されるようになったのは、2006年に日本城郭協会(東京)の「日本100名城」に選定されたのがきっかけ。昨年度の根室のチャシ跡の来場者数は3261人(前年度比1084人増)で年々増えており、名城を巡る人気は続いている。

 13年ごろから根室チャシ跡のツアーを企画する大手旅行会社クラブツーリズム(東京)の担当者は「ツアー客の目的は根室のチャシ跡だが、歴史やアイヌ民族への興味が強くあるため、釧路のチャシ跡も見たいと思う人が多い。宿泊先は釧路市内がほとんどで、道中や帰りに寄りやすいという理由もある」と説明する。

 現在、釧路市内のチャシ跡の案内は埋蔵文化財調査センターの学芸員3人が担当している。高橋学芸員は「釧路のチャシ跡が注目されることはありがたいが、このペースで訪問者が増えると、受け入れ態勢の整備が必要になるだろう」と話している。

ガイド養成、猪熊学芸員に聞く 関連文化の魅力も発信

 根室市観光協会が行うチャシ跡の市民ガイド養成講座の講師を務めた根室市歴史と自然の資料館の猪熊樹人(しげと)学芸員(42)に今後の展望などを聞いた。

 ――道東のチャシ跡への訪問者の増加をどう受けとめていますか。

 「現在、根室でガイドを務める『トコロジストの会』の会員は、アイヌ民族やチャシについて自分たちでかなり勉強されています。ガイドのレベルが高いからこそ、ガイドをしてほしいという要望が旅行会社などから来るのだと思います。増加は一過性のものではなく、しばらく続くと考えられます。今後も増えることを想定して受け入れ態勢を整える必要があります」

 ――根室で6月30日と7月1日に初めて開催された市民ガイドの養成講座で意識したことは何ですか。

 「講座ではチャシ以外にも、近年の市内の遺跡の調査結果やオホーツク文化などについても説明するようにしました。ヲンネモトチャシ跡のそばにはオホーツク文化期の竪穴住居跡があり、古くからこの場所が人々に利用されてきたことが分かります。チャシ以外にも関連するさまざまな事柄を紹介できるようになれば、ガイドの内容に厚みが出るでしょう」

 ――今後の釧根のチャシ観光に期待することは何ですか。

 「ツアーの玄関となっているのは、釧路空港や女満別空港です。ツアー客には、根室のチャシ跡への道中にある釧路や標津などのチャシ跡も紹介するようにしています。お互いに紹介するようになれば、相乗効果がさらに高まる可能性があります。チャシを入り口にして、ツアー客が擦文文化やオホーツク文化などにも関心を向けてもらえればと思います」

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