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原爆投下から73年 「核禁止」の重み再認識を

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 自分たちが体験した地獄のような苦しみは、もうほかのだれにもさせたくない―。

 被爆者の切なる願いは世界中の市民に共感を持って受け入れられ、「核兵器なき世界」を目指す原動力となってきた。

 米国は73年前のきょう、広島に、9日には長崎に原爆を投下した。この年のうちに計21万人が死亡し、生き延びた人々も放射線の重い後遺症に苦しんでいる。

 昨年、被爆者の「受け入れがたい苦痛と被害を心に留める」と明記した核兵器禁止条約が、国連で採択された。

 被爆者とともに条約実現に貢献した核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)には、ノーベル平和賞が贈られた。

 にもかかわらず、世界には米国、ロシアを中心になお1万4千発以上の核兵器がある。朝鮮半島の非核化も予断を許さない。

 広島市の松井一実市長はきょう読み上げる平和宣言で「世界で自国第一主義が台頭し、冷戦期の緊張関係が再現しかねない」と懸念を表明する。

 こうした状況だからこそ、唯一の戦争被爆国である日本の果たすべき役割がある。

 ひたすら米国の「核の傘」への依存を強めるのではなく、核兵器の非人道性を粘り強く訴え、核廃絶を主導しなければならない。
米の危ういディール

 6月にシンガポールで開かれた史上初の米朝首脳会談。トランプ米大統領と金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長は朝鮮半島の「完全な非核化」
で合意した。

 米朝間の軍事的緊張はやわらいだものの、非核化に向けた具体的な行程、手順はいまだに明らかになっていない。

 それどころか、北朝鮮が依然として核兵器の開発を続けているとの疑惑は消えない。

 米国は、米英仏中ロ独がイランと結んだ核合意からも離脱した。米国以外はイランが約束通り合意を履行していると認めているのに、トランプ氏は「最悪の合意だ」と耳を貸さなかった。

 イランへの経済制裁を復活させる構えの米国に対し、イランは核開発の再開をちらつかせる。

 核兵器すらディール(取引)の材料にするトランプ政権の手法は極めて危険だ。北朝鮮の非核化も本気なのか、疑念がわく。

 加えて米国は、2月に発表した新たな核戦略指針に、小型核の開発などを盛り込み、核使用のハードルを引き下げている。

 核拡散防止条約(NPT)は米英ロ仏中の5カ国に、核兵器の不拡散と、核軍縮を求めている。これに反する米国の核戦略はあまりに身勝手と言わざるを得ない。
見えない日本の行動

 核兵器禁止条約は、核兵器の使用、保有、実験に加え、使用するとの「威嚇」も禁じる。

 日本政府は相変わらず反対の立場だ。「(非核化の)ゴールは同じだが、アプローチが違う」のが理由という。その代わりのつもりなのだろう。核保有国と非保有国の「橋渡し役」を強調している。

 だが、これまでいったい何をやってきたのか。

 日本は1994年以来、毎年国連総会に核兵器廃絶決議案を提出し、採択されてきた。昨年も採択はされたものの、賛成票が大幅に減った。決議案で核兵器禁止条約に一切、言及しなかったためだ。

 共同通信のアンケートで、全国の被爆者の8割が「日本政府は条約に参加すべきだ」と答えた。条約に反対する姿勢に「被爆者の長年の活動を無視した」との厳しい意見も寄せられた。

 日本政府は米国の核で他国からの攻撃を抑止するという考え方を最重視する。しかし、実際に核が使われれば取り返しはつかない。
全世界を枠組み内に

 今こそ核兵器は絶対悪であることを再確認し、核兵器禁止条約への参加を真剣に検討すべきだ。

 条約には1年弱で60カ国が署名し、うち14カ国が批准した。米国など核保有国の圧力も指摘されるが、2019年末ごろに50カ国が批准し、発効する可能性がある。

 ICAN国際運営委員の川崎哲(あきら)氏は「北朝鮮に条約への署名、批准を求めるべきだ」と提言する。

 条約は核廃棄のプロセスを具体的に示しており「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)」にもつながるという。

 北朝鮮が核実験の中止を内外に宣言したのを受け、包括的核実験禁止条約(CTBT)への署名、批准を求める声も上がっている。

 CTBTは米国などが批准せず、未発効だが、核実験場の検証などが可能だ。

 透明性が高く、拘束力のある国際法を活用し、非核化を進める。北朝鮮も米国もこの枠組みに入るよう働きかけるのが、被爆国としての責務ではないのか。

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