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<第7部 白鳥大橋かいわい>10 岬のギャラリー 独自画法で自然美描く

 夕暮れ時の穏やかな室蘭港、朝日が差して浮き立つ地球岬。絵鞆半島の先端にある「ギャラリー森田」(絵鞆町2)には、透明感あふれる絵画約70点が並ぶ。

■週末に無料公開

 室蘭出身の画家森田哲隆(てつたか)さん(69)が2004年に開設し、週末に無料で自分の作品を公開している。「絵の修業で東京で過ごしたが、帰ってきて室蘭が絵の題材の宝の山だと気付いた」と語る。

 アジアや欧州など世界各地を歩いて描いた絵も多い。その中でひときわ存在感を放つ大作があった。遊覧飛行で実際に上空から見た、世界最高峰エベレストを描いた「天厳(てんがん)の立道(りつどう)」。自由で斬新な絵を指向する美術団体・一期会の公募展で14年、内閣総理大臣賞に輝いた。

 森田さんは「絵は自然の美しさを師匠とし、自分の心を映し出す」と語る。

 絵を描いた最初の記憶は5歳のころ。チョークで自宅の便所に、怒って眉間にしわを寄せる母の顔を描いた。用を足しに入った母の笑い声が聞こえた。

 10歳のころ、自宅近くの橋の路面にチョークで室蘭港の風景を描いた。通り掛かった年配の男性が「君は絵描きになれる」と褒め、三色ボールペンをくれた。画家への夢を膨らませるようになった。

 中学卒業後、家業の土木建設業を経て、1967年に17歳で上京した。日本画を初歩から学ぶ美術教室に通った。苦労の連続だった。ちんどん屋や氷屋で働いて生活費を稼ぎ、アパートの共同炊事場に捨てられたダイコンの葉をゆで飢えをしのいだこともあった。

 日本画の勉強に一区切りが付き72年、室蘭に戻った。地元では日本画の画材が手に入らなかったため、油彩に転向して独学で創作を続けた。家業を手伝いながら、自ら作品を背負って売りに歩いた。

 輪郭を色の濃淡で表現する日本画の「ぼかし」の技法を応用し、筆先をキャンバスにたたくように細かく色付けする独自の画法を身に付けていった。

 転機は77年に訪れた。夕日で赤く染まる大沼と駒ケ岳を描いた作品が、地方の美術館創設などに熱心な美術団体・日輝会の公募展で入賞した。同会の三上隆彦会長が作品を評価し、「人まねではなく、自分ならではのものを創らなければいけない」と激励した。

■道の駅にも展示

 98年には、夕焼けの海と測量山、街明かりを描いた作品「明日への希望」を市に寄贈した。「悪天候の日に訪れた人にも、室蘭の風景を見てほしい」と思いを込めた。道の駅みたら室蘭に今も展示されている。

 ギャラリーには、噴火湾や大黒島が一望できるテラス「岬の茶屋」が併設されている。夏の週末、妻啓子さん(69)が、手作りのコンブチップとメカブ茶を来場者に振る舞っている。

 7年ほど前から絵画教室を主宰し、絵に本格的に取り組む道内外の10人を指導している。「支えてくれた市民に恩返しができる大衆画家でありたい」という思いを胸に、森田さんは今日も筆を握っている。

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