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<訪問>「ミルク・アンド・ハニー」を書いた 村山由佳(むらやま・ゆか)さん

性愛の先 「死生観」の物語

 赤裸々な性愛の描写で話題をさらった「ダブル・ファンタジー」(2009年)の続編。柴田錬三郎賞、島清(しませ)恋愛文学賞などを受賞した衝撃作から続編まで9年かかった理由を「何度か話はあったが、前作を超える内容を書く自信がなかった。ようやく私自身の内面に、前作とは違う生への喜び、充実感が生まれ、書き上げることができた」と話す。

 「ダブル~」は、脚本家の奈津が、夫の束縛から逃れるように男たちと情事を重ね、自由を模索する様子が描かれた。大御所演出家、学生時代の先輩、僧侶…。恋愛に対し、奔放に見える奈津だが、癒やされることのない孤独がかいま見えた。先月からWOWOWでドラマ化(全5話)も実現した。「続編の連載中に偶然、ドラマ化が決まった。原作にはない母親との関係もあり、(制作者に)真剣につくってもらえたと思う」と素直に喜ぶ。

 続編「ミルク・アンド・ハニー」は、前作で出会った新しい恋人と暮らすところから始まる。その彼との再婚。しかし、ほどなくすれ違いが生まれ、幾人かの男との関係も続く。奈津の父の死も描かれた。情熱的な性愛を超えた穏やかな心、前作にはない充実した幸せが奈津に訪れる。「実際に連載中に私の父親が急死した。その体験が下敷きになり、ラストが決まった」と振り返る。

 恋愛小説の名手、渡辺淳一さんと交流が深く、「僕の後継者」ともいわれた。6月20日には、渡辺淳一文学館で開館20周年記念の講演も行った。生前渡辺さんから、「ダブル~」について「いま少しのふくらみと、性への思索的実感があれば良かった」との評を受けた。「どういう意味かさっぱり分からず、いつも頭の隅に残っていた。でも『ミルク~』では、何となく少しはそれが表現できたのかな」と手応えを感じたという。「その感触を言葉にするのは難しいけど、男女の寂しさだけではなく、もう一歩踏み込み、『死生観』につながるような物語が書けたのでないかと思う」

 北海道との縁は深く、趣味の乗馬で月1、2回は訪れていた。「ミルク~」でも、奈津の隣人に、乗馬で知り合った日高の女性が登場する。近年は忙しさもあり、なかなか乗馬ができないが「自馬(持ち馬)は北海道に預けており、時間があれば乗ってみたい」と言う。

 現在は、大正時代の婦人解放運動家伊藤野枝を主人公にした「風よ あらしよ」を「小説すばる」で連載している。村山さんにとっては初めての評伝。これからの執筆について「渡辺先生から言われた『特殊を描いて普遍に至る』を突き詰めたい」と意欲を見せている。

文化部 久才秀樹

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