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日欧EPA署名 国会で徹底検証が必要

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 日本と欧州連合(EU)はきのう、昨年12月に交渉が妥結した経済連携協定(EPA)に署名した。日本政府は秋の臨時国会に協定承認案や関連法案を提出し、来年3月末までの発効をめざす。

 米国を除く11カ国の環太平洋連携協定(TPP11)に続いて自由貿易の枠組み構築を急ぎ、保護主義を強める米トランプ政権をけん制する狙いがあるのだろう。

 だが忘れてならないのは、TPP11も日欧EPAも、日本からの輸出増といった工業への恩恵と引き換えに、1次産業に犠牲を強いる協定であることだ。とりわけ、道内への影響は大きい。

 2千ページの協定文の中身に問題はないか。農業への打撃の規模は。国内対策は十分か―。国会で徹底審議すべきだ。生産者の不安を顧みない拙速な承認は許されない。

 日欧EPAでは、EUが日本車にかける10%の関税を発効後8年目で撤廃する一方、日本はTPP11と同じく農林水産物の8割(品目数ベース)の関税をなくす。

 特に心配なのはチーズへの打撃だ。TPP11で関税を維持したモッツァレラなどソフト系チーズについても市場開放に踏み切る。

 道内のソフト系チーズの生産者や、チーズ用に生乳を供給する酪農家の経営が揺らいでは困る。

 現行の国内対策には「生産大規模化や競争力強化に偏っている」との指摘もある。政府は、小規模生産者の赤字補填(ほてん)など経営安定化策にも目配りしてもらいたい。

 TPP11と同じく関税が大きく下がる豚肉も北海道が主産地であり、畜産農家への影響が懸念される。安いEU産木材の流入にさらされる林業も同じだ。公的支援の拡充を検討する必要がある。

 巨大貿易協定が相次ぎ発効に向かう中、道内生産者は打撃の度合いを測りかねている。政府の影響試算が甘いことが主な理由だ。

 政府は国内農林水産物の生産減少額について、TPP11で最大1500億円、日欧EPAで最大1100億円と試算する。

 見過ごせないのは「両協定の影響額は合算不能」と説明していることだ。試算は機械的に行っており、TPP参加国産とEU産とが日本でどう市場を奪い合うかなど詳細が分からないためという。

 では、生産者は何を目安とすればよいのか。また、それでは国内対策が十分かも判断できまい。

 政府は、試算を精緻で信頼性のあるものにしなければならない。その上で、マイナス面も含め、包み隠さず情報公開すべきだ。

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