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<訪問>「誰がテレビを殺すのか」を書いた 夏野剛(なつの・たけし)さん

業界に警鐘 生き残りへ提言

 1960年代に映画に取って代わり、「娯楽の王様」に就いたテレビ。社会に強い影響力を持ってきたが、インターネットやスマートフォンの普及でその座も揺らいでいる。著者は「それでも、テレビコンテンツの可能性はすごくある」と話す。

 本書では、テレビ業界への警鐘と生き残りへの提言を示した。

 NTTドコモに勤務していた時代、携帯電話の通信サービス「iモード」や決済機能「おサイフケータイ」の開発に尽力し、スマホ社会の礎となる技術を生み出した。新機種の発表時は「テレビがどう取り上げるかがヒットのバロメーターだった」。退社後は朝のワイドショーのコメンテーターとして長年出演し、そこでも「テレビの影響力を身に染みて感じてきた」と振り返る。

 だが、テレビは今、苦境に陥っている。無料のユーチューブ、有料のアマゾン・プライムビデオなどの動画サイトに視聴者を奪われている。

 著者はテレビ業界と世間との常識のずれに疑問を持ち続けてきた。東京のキー局は大手芸能事務所に「忖度(そんたく)」し、解散した国民的アイドルグループの元メンバー3人の話題を黙殺している。一方で、ネットでの露出に否定的なこの事務所の意向に従って、所属タレントが出演するドラマをネット配信しない。

 「それはテレビ局の経営陣の問題。この事務所のタレントを使わずに配信しようという社があってもいい。誰かが指摘しないとまずいと思った」

 なんでもクレームをつける視聴者と、それに合わせて無難な番組作りをするテレビ局。両方に苦言を呈しつつも「テレビ局が作る番組はネットより質が高く、問題のある表現も少ない。テレビ以外にも映像を供給する企業に変われば収益が増え、ネットには良質のコンテンツがあふれてくる」と語る。

 53歳。現在は慶応大特別招聘(しょうへい)教授のほか、ドワンゴといったIT企業などの取締役を兼任。東京五輪・パラリンピックでは組織委の参与を務め、マスコットを小学生に投票で決めてもらうことを提案した。

 実はドコモ時代、テレビ局買収を進めていた企業から「成功の暁には経営してほしい」と声をかけられた。「しがらみで大変だっただろうけど、もっとネットとテレビを近づけようとしていたと思う」と話す。

 取締役を務めるドワンゴはネットから将棋ブームに火をつけた。ではテレビも盛り返す策はあるのか―。「昔から続くものは必ず良さがあり、新しい技術にのせて発信すれば価値が上がる。テレビの可能性を殺しているのは、人なんです」

東京報道 大原智也

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