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<書評>敗れても敗れても

門田隆将著

東大野球部94連敗 折れぬ心
評 黒田信一(ライター)

 日本プロ野球における最多連敗記録は、1998年に千葉ロッテマリーンズが1引き分けを挟んで記録した18連敗である。

 大リーグにおけるそれは、1901年(明治34年)以降の近代野球に限ると、フィラデルフィア・フィリーズが記録した23連敗だそうだ。

 だがそれらの数字が褪(あ)せて見える連敗記録がある。東京大学野球部が、2010年から15年までの間に記録した、2引き分けを挟んでの94連敗。まさかの記録である。

 本書は、来年19年に創部100年を迎える東大野球部の歴史を“負け続け”という視点から捉えたルポルタージュだ。著者の門田隆将は書く。「なぜ、こうまで負けつづけるのか。勝てなくてもいいのか」と。

 歴史ある東京六大学野球リーグに所属する東大野球部は、一度も優勝経験がない。それどころか、17年秋季リーグ終了時点での通算勝率が1割3分5厘という、茫然(ぼうぜん)自失してしまうような成績である。

 理由はある。甲子園出場など高校野球のスターたちが集うリーグに所属しながら、入学試験の難しさによって才能ある選手が集まらないのだ。

 しかしだ。門田が書いているように、創意工夫によっては番狂わせが起こりやすい団体競技でありながら、94連敗もするというのはどう考えればいいのか。何かの間違いか。それとも運か。

 しかし読者は負け続ける東大野球部員たちの言葉にこめられた苦悩、後悔、ため息を読むうちに気づかされるはずだ。なぜ彼らは94連敗もできたのか。それは野球を諦めることなく、ただ愚直に勝利を求め続けたからこそではないか。敗れても敗れても、折れることなく明日の試合に挑む勇気があったからこその94連敗ではなかったか。その勇気に、負け続けることの多い人生を生きる私たちは力づけられる。

 そう。本書は野球凡人たちが持ち続けた、折れない心の勝利の物語なのだ。(中央公論新社 1728円)

<略歴>
かどた・りゅうしょう 1958年生まれ。ノンフィクション作家。2010年「この命、義に捧ぐ」で山本七平賞

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