PR
PR

<第7部 白鳥大橋かいわい>4 老舗酒屋 「本物の酒」家族で広め

 「毎度でーす。ご注文のお酒、お持ちしましたー」。100年以上の歴史を持つ「酒本(さけもと)商店」(祝津町)の4代目、酒本慎也さん(23)が元気よくのれんをくぐり、日本酒のケースを運び入れた。

 室蘭やきとりの老舗「吉田屋」(中央町)の店主吉田静枝さん(72)は「酒本さんが卸す日本酒はどれもおいしい」と信頼を寄せる。慎也さんの祖父で、2代目の故久平さんの時代から取引が続いている。

 父で3代目店主の久也さん(61)は「1度飲んだ酒の味は忘れない」という利き酒の能力を持つ。人気漫画「夏子の酒」の登場人物のモデルにもなった。

 同商店は1911年(明治44年)、漁師相手の雑貨店として始まった。米や酒類、炭、化粧品、ストーブの煙突まで扱った。

■おいしさに驚く

 久也さんが大学3年の時に父の久平さんが亡くなり、卒業後すぐに店を継いだ。当時の日本酒は醸造用アルコールや糖類を加えた「三倍増醸酒」が主流だった。札幌の飲食店で吟醸酒を飲み、「本物の酒はこんなにおいしいものか」と目からうろこが落ちた。

 「本物の酒を広めたい」と全国の小さな酒蔵を訪ね歩き、隠れた名酒を探し求めた。大手スーパーの進出で、雑貨店からの業態変更の必要性を感じていた時期だった。思い切って、日本酒に軸足を移した。

 数年間は全然売れず、在庫が積み上がった。「まず飲んでもらわなければ」と、87年に全国の酒を集めた試飲会「地酒祭」を初めて開いた。ファンは徐々に増え、これまでに72回を数える人気イベントになった。

 現在、全国の酒蔵50軒から吟味した地酒100種類を店頭やインターネットで販売している。ワインアドバイザーの資格を持つ妻のぶ子さん(59)が目利きしたワイン約200種類も取り扱う。

■父の背中追って

 慎也さんは自然と父の背中を追い、高校卒業後に日本酒の世界へ入った。「酒造りから学びたい」と、福井県の南部酒造場で住み込みで1年半修業した。その後、旅館などで働いて資金をため、1カ月間、フランスを自転車で縦断しながら、ワインを飲んで研究した。

 家業の酒屋に入って3年目で、主に取引先への配達を担う。「『酒本さんの息子かー』と言われると、誇らしい半面、自分ではなく親の力だと感じる」と複雑な胸の内を明かす。

 久也さんは「自分もそうだった。父が地域密着の商売の種をまいてくれていた」としみじみ語る。父の久平さんは、町会長や消防団長、PTA会長、地元商店会の会長を務め、地域の顔役だった。

 久也さんには忘れられない思い出がある。慎也さんが高校卒業時の懇親会で、同級生や父母らを前に、照れくさそうに「あそこにいる人(父)を超えるのが目標」と将来の夢を語ったことだ。「そんな風に思っていたことに驚いたが、いずれ自分のやり方で店を継いでくれると思う」と目を細めた。

どうしん電子版のご案内
北海道新聞 購読の申し込みはこちらから
新聞配達スタッフ募集
ページの先頭へ戻る