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滋賀の再審決定 証拠開示のルール化を

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 滋賀県日野町で1984年に起きた強盗殺人事件を巡り、大津地裁が再審の開始を認めた。

 酒店経営の女性を殺害、手提げ金庫を奪ったとして無期懲役が確定し、服役中に75歳で病死した男性の遺族が申し立てていた。

 浮かび上がったのは数々の冤罪(えんざい)事件と共通する構図である。

 地裁の決定は「警察官の暴行や脅迫で自白した合理的な疑いがある」などと認定して自白の任意性や信用性を否定し、証拠にも大きな疑問を投げかけた。捜査機関は猛省しなければならない。

 重大事件で「死後再審」が認められるのは極めて異例だ。本人や遺族の無念を考えれば、ただちに再審公判に移行して名誉回復を図るべきだ。

 併せて、政府や司法当局は再審請求審における証拠開示のルールづくりを急ぐ必要がある。

 自白への評価は確定審の段階から揺れていた。一審は「自白には不自然な点もある」と疑問視したが、二審は「根幹部分は十分に信用できる」と判断していた。

 有力な客観証拠がなかっただけに、裁判所が自白の不自然さを見抜いていれば、もっと早く男性の起訴に疑いが生じていた可能性がある。今回の決定を司法も重く受け止めねばならない。

 証拠の問題も看過できない。

 男性が、金庫の投棄現場まで捜査員を案内しているように見える実況見分の写真である。

 捜査機関はこれを有罪の根拠としたが、現場からの帰り道の写真が半数近く紛れ込んでいたことが再審請求審で判明した。

 捜査機関が証拠を操作したと見られても仕方あるまい。決定が「男性が現場を知っていたとする確定審の判断は大きく揺らいだ」と結論付けたのはうなずける。

 そもそも写真の不可解さは、弁護団が検察に証拠の提出を強く求めてようやく明らかになった。

 裁判員裁判などでは、検察が証拠のリストを弁護側に交付する義務があるが、再審請求審は対象から外れている。

 無罪を示す重要証拠が存在する可能性があるのに、弁護側が把握できないのは公正・公平に反する。捜査機関による証拠の隠蔽(いんぺい)や捏造(ねつぞう)を防ぐためにも、開示する仕組みの早急な整備が求められる。

 再審請求を巡っては、今回のように審理の長期化で当事者が死亡・高齢化する例が少なくない。

 誤判からの救済という制度の目的を損なわぬよう、裁判所や検察は迅速な審理に努めるべきだ。

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