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第3部 レッドベア出発進行 取材記者座談会

 北海道新聞の札幌市内版で11日まで5回連載した「ひと まち ターミナル」の第3部は、今年で開業50周年を迎えたJR貨物の札幌貨物ターミナル駅(札幌市白石区)を舞台に連載しました。取材した津野慶記者(45)と袖山香織記者(35)が、連載で書ききれなかったエピソードや取材で感じた思いを語り合った。


 津野 札幌貨物ターミナル駅については以前から、JR千歳線の列車の車窓から眺めてはいましたが、具体的にここで何を行っている施設なのかは知りませんでした。昼はガランとしていて線路がたくさん並んでいるだけ。取材して初めて、ここが国内で2番目に貨物取扱量が多い鉄道貨物駅だと知りました。

 デスク 袖山記者は貨物機関車に同乗し、貨物ターミナル駅―東室蘭間を往復しました。


 袖山 貨物列車には運転士1人しか乗り込まないというのに驚きました。運転中、何より怖いのは眠気。線路が真っすぐ続き、単調な区間も多いのです。途中、1分間ブレーキなどの操作をしないと鳴り響く緊急停止装置のブーという音が大きくてびっくり。いかに眠気を防止するかが重要かということが分かりました。

 デスク 1人だといろいろ苦労がありますよね。

 袖山 何よりつらいのは動物との衝突だそうです。誰にも頼れず、1人で動物を処理しなければならない。運転士の配川裕介さんは昨年1年間で、シカ9頭、クマ1頭の計10頭とぶつかったそうです。ぶつかったシカが線路上に倒れてしまっている時は、運転士が線路脇に自分で寄せる。その作業が悲しいと、配川さんは話していました。

 デスク 貨物ターミナル駅の面積は56万平方メートルと広大です。

 津野 駅舎は列車編成と貨物の取り扱い部門で2カ所に分かれていて、直線距離で1キロ近くも離れています。地域住民がターミナル駅をまたぐ時に使う歩行者用の人道橋は全長294メートルという長さ。反対側の人影がよく見えないほどです。この人道橋は屋根と壁があるので冬も快適で、左右に窓もある立派なつくりです。貨物列車を撮影する鉄道ファンの常連さんもいます。残念なのは人道橋の窓が古くなって、ほとんどが曇ってしまっていること。もっと透明な窓だったら、もっと楽しめそうです。取材した住民からも、そんな声を聞きました。

 デスク 貨物ターミナルは夜、作業のピークを迎えます。日中はどんなことが行われているの?

 津野 貨物列車の出入りが少ない昼も、構内では小さな機関車が、貨車を押したり引いたりして動き回っています。定期的な検査が必要な貨車を入れ替える作業だそうで、約30本の線路を使い、出し入れを繰り返しています。鉄道ファンになったつもりで見ていると、作業の中身が分かって面白い。これだけの線路のポイント切り替えをよく間違えずにできるなと思いました。

 デスク ポイントを切り替えする信号の制御盤も紹介しました。

 袖山 信号を制御する作業は駅2階の事務所で行われていました。どの線路に貨車を入れるか、無線で現場から連絡を受けると、信号の担当者はパソコンなどは使わず、制御盤に並ぶボタンを押して線路のポイントをコントロールします。人の手で制御するアナログさは返って新鮮でした。この制御盤は正確な年数は分かりませんが、30年以上前から使われているそうです。

 デスク 貨物ターミナル駅周辺には倉庫群やトラックターミナルなど物流機能が集約されているのも興味深かったです。


 津野 この一帯には鉄道コンテナを運ぶトラック会社だけでなく、苫小牧や小樽からフェリー経由で届いた貨物を運ぶ会社もあって、道民の生活を支える巨大な物流基地になっています。一帯の面積は230万平方メートル、札幌ドーム42個分にも及びます。私は大学生だった20年余り前、この地区の運送会社で夜間、宅配便の仕分けアルバイトをしました。その建物が残っていて懐かしかった。今回取材した運送会社の方も学生時代に私と全く同じ場所でアルバイトをしていたと分かり、盛り上がりました。

 デスク 周辺の施設などにも幅広く取材しましたね。

 津野 紙面では紹介できませんでしたが、人道橋の出入り口にある民間の原爆資料展示館「北海道ノーモア・ヒバクシャ会館」も取材しました。広島の原爆ドームに似た建物で、北海道被爆者協会が寄付金を集めて1991年に建てました。JR平和駅が人道橋につながっているので、平和という駅名と被爆者の思いとの関係を知りたくて会館に聞くと、直接関係はなく、関係者が訪れやすいようにとJR駅に近い今の場所をたまたま選んだそうです。最近は貨物駅を見に来た鉄道ファンが会館を見て、関心を持ってくれる人もいるようです。JR貨物の若手社員も労働組合の研修で来てくれるそうで会館の方々はうれしそうでした。

 デスク 企画に登場してくれたJR貨物の社員は若い世代が多かったですね。


 袖山 国鉄民営化の前後、採用を抑えていた影響で中堅社員が少なく、技術をどう伝承していくかが悩みの種だそうです。

 デスク 今回の連載は、現場の臨場感や雰囲気がより伝わるようにと、毎回、動画を電子版に掲載しました。

 袖山 職場は若々しく、楽しい雰囲気にあふれてました。夜勤の社員が夕飯を食べる時は、大きなガス釜で大量の米を炊き、みんなで囲む。今ではなかなか見られない光景です。勤務は24時間体制で、貨物列車の運行は夜が中心。たくさんご飯を食べないと体が持たないんですね。若い社員が多くても貨物列車はやってくる。仕事はとにかく実践で覚える。若い力が北海道の物流を支えているんだなと思いました。

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