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<書評>ヤングケアラー

渋谷智子著

孤独に苦しむ10代の介護者
評 山村基毅(ルポライター)

 かつて、親の介護をする独身者たちの話を聞いて回ったことがある。すでに中高年となった介護独身者である。介護のために結婚できなかった者もいれば、結婚しなかったため介護を任された者もいた。偶然にも、話を聞いた人たち全員にきょうだいがいたのだが、彼らは一様に心優しき人々で、それもまた、彼らに「介護」というカードが回ってきた理由の一つなのである。

 本書は、タイトルのように介護に直面した若者世代(18歳以下と規定される)に関する考察だが、介護独身者たちと同じように、子どもながらに「やむにやまれぬ」思いを抱えて介護に当たっているようだった。

 たとえば、今は21歳の女性Bさん。16歳からの5年間、祖母の食事から排せつに至るまでの身の回りの世話に明け暮れる。介護が始まった時、祖父、父も病に倒れて入院、勤めていた母は祖父や父の世話で手いっぱいとなったために祖母はBさんが面倒を見ることに。Bさんは私立高校をやめ単位制の高校に移る。きっと認知症の始まりなのだろう、祖母は深夜にもBさんを呼びつけたり、食事をしたことを忘れて、何度も催促することもあったという。

 Bさんが受験する時に祖母が亡くなるのだが、それまで介護は続いていた。

 こうした例を読むと、学業がおろそかになったり、クラブ活動に参加できなかったりする以上に、彼らにとって深刻な問題は「孤独」なのである。誰とも辛(つら)さや苦しさを分かち合えないことが、たまらなく寂しく、そのために辛さは倍増していく。

 著者は、子どもの担うケアの負担を軽減させつつ、ヤングケアラーが集う場の必要性を訴える。介護について語り合う、それがいかに大切かは、大人による介護でも同じであった。介護独身者たちの何人かは「世の中から置き去りにされたよう」と自身を評していた。

 心優しき子どもたちが、その優しさ故に自ら望んだ道を進めないのなら、それはあまりに悲しすぎるようにも感じるのだ。(中公新書 864円)

<略歴>
しぶや・ともこ 1974年生まれ。成蹊大文学部准教授。専門は社会学・比較文化研究。著者に「コーダの世界」など

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