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米中高関税発動 泥沼化させてはならぬ

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 世界1、2位の経済大国が高関税をかけ合う異常事態が現実となった。「貿易戦争」とも呼べる局面に移ったと言えよう。

 トランプ米政権は、中国の知的財産権侵害への対抗措置としてロボットといったハイテク製品などに制裁関税を発動した。中国はすかさず、大豆や牛肉などへの同規模の報復関税で応じた。

 対象品目は各340億ドル(約3兆8千億円)分にも上る。自由貿易体制を揺るがし、日本を含む世界経済を減速させかねない。

 「米国第一」を掲げ、保護主義的な通商政策を次々繰り出すトランプ氏の姿勢は認められない。

 米国はさらなる制裁に踏み切る構えだが、情勢を泥沼化させるだけだ。正常な貿易政策へ立ち戻ることこそが求められる。中国も態度を硬化させてはならない。両国とも制裁を早く撤回すべきだ。

 見過ごせないのは、秋の中間選挙に向け政権への支持を高めたいトランプ氏の思惑が透けることだ。一国の指導者の事情が国際経済を犠牲にするようでは困る。

 中国に知財を軽んじる姿勢が見られるのは確かだ。先端技術での覇権を狙う強権的な態度が国際社会の不信を招いてもいる。

 だがそうした問題はあくまで世界貿易機関(WTO)などの場で解決すべきであり、力に訴える米国の姿勢は正当化されない。

 米国は、保護主義が自国の利益も損なうと認識すべきだ。

 高関税は米国の消費者・企業に逆風となり、既に反発を招いている。二輪大手ハーレーダビッドソンは米欧の関税摩擦を嫌い、一部生産拠点を国外に移す方針だ。

 相互依存を深める国際経済において、自国だけが有利に事を運ぶ道はありえない。

 深刻なのは、高関税の応酬の打撃が米中間にとどまらない点だ。

 日本製部品が中国に輸出されて完成品となり、米国に渡る場合もある。影響は小さくなかろう。

 また、制裁関税で米中から締め出された物品が他国に流入すれば、市場の需給を乱す。

 米国が高関税で自国産業を守ろうと定めたスムート・ホーリー法が欧州の報復と大恐慌の深刻化を招き、第2次世界大戦の一因となった歴史を忘れてはなるまい。

 米中は本来、世界経済の安定成長を先導すべき存在だ。双方が制裁関税を発動したことは、責任感の乏しさを物語っている。

 日本や欧州などの主要国は、米中を自由貿易体制に戻す努力を粘り強く続けなければならない。

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