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<天売・羽幌 オロロン鳥の現在地>上 保護17年伸びる個体数

 「オルッ、オルルルン」。のどから絞り出すような低い鳴き声が天売島の断崖絶壁に響く。オロロン鳥の名で知られる絶滅危惧種ウミガラスは5~7月が繁殖の季節だ。昨年は51羽が飛来し、つがいは20組、17羽のひなが巣立った。いずれも過去20年間で最も多かった。鳥類研究が専門の東海大生物学部講師(動物生態学)の松井晋(しん)さん(40)は「今の状況が続けば」と条件を付けつつ「50年後の個体群は150~750羽になる」と試算する。

 日本海に面する留萌管内羽幌町の西約30キロに浮かぶ天売島は周囲12キロの小さな島だ。人口300人に対し海鳥は100万羽。ウミガラスをはじめケイマフリやウトウなど8種が営巣する。有人島にこれだけ大きなコロニーを形成しているのは世界でもまれだ。

■20羽まで減少

 ただ「海鳥の楽園」は人が近くに住むがゆえの苦難に見舞われてきた。1960年代まで推定8千羽いたウミガラスは70年代に500羽、80年代に100羽、90年代に20羽まで激減した。水中に潜って魚を捕るため漁網に引っかかったり、餌のイカナゴの減少、営巣地に近づく観光客などが原因という。

 群れが極端に小さくなったことで、卵やひなを狙うオオセグロカモメやハシブトガラスなどの捕食者から集団で身を守る力も失い、ウミガラスは国内唯一の繁殖地・天売で絶滅寸前の危機に直面した。

■捕食者対策も

 環境省と町は2001年から保護増殖の取り組みを本格化させた。営巣を促すため岩棚にウミガラスに似せたデコイ(模型)を設置、鳴き声を流す音声装置も付けた。動画撮影できるカメラで巣内部のモニタリングを始めた。捕食者対策としてハンターを雇った。

 留萌管内苫前町のハンター林豊行さん(69)は繁殖期の3カ月間、週1回のペースで天売に渡り、エアライフルでカラスを捕獲する。「もう完全に顔を覚えられちゃってね。僕を見ると逃げていくんだよ」と笑う。11年から始め、当初は100羽以上捕獲したが、最近は1回に1羽か2羽だ。

 捕食者対策後、巣立ち成功率は30%台から80%近くまで向上。繁殖実績も上がった。環境省羽幌自然保護官事務所の岩原真利さん(31)は「確実に成果を上げています」と笑顔を見せた。(羽幌支局の長谷川賢が担当し、3回連載します)

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