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キリシタン遺産 信仰継承の歴史後世に

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 キリスト教禁制期の歴史を伝える「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」(長崎、熊本)が、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産に決まった。

 約250年にわたる禁教下、既存の宗教や社会と折り合いながら、ひそかに信仰を継承した。

 「独特の宗教的伝統を物語る、他に類を見ない証拠」との世界遺産委員会の評価はうなずける。

 キリシタン迫害は近世日本の「負の歴史」だが、現代に通じる問題を含んでもいる。

 弾圧下で信仰を貫いた人々の歩みに光が当てられたことに、今日的な意義を見いだしたい。

 遺産は、キリスト教伝来から禁教・迫害、幕末に潜伏信徒が神父に名乗り出るまでの苦難を示す。

 「島原の乱」の舞台・原城跡(長崎県南島原市)や現存する国内最古の教会・大浦天主堂(国宝、長崎市)など12資産から成る。

 多くの世界遺産と異なり、記念碑的な建造物は少ない。核となるのは、弾圧を逃れた人々が住み着いた集落だ。

 信徒らは仏教徒などを装い、観音像をマリア像に見立てるなどして、7代の間、信仰を守った。

 集落には、素朴な教会や聖地、祈りに使う信心具などが伝わり、往時の景観が残る。

 信仰を持ち続けた人々の営みそのものに、人類共通遺産としての価値が認められたと言えよう。

 潜伏キリシタンを題材にした遠藤周作さんの小説「沈黙」は、世界中で読み継がれている。

 宗教を理由にした不寛容や暴力はなお後を絶たない。この地を訪れる人は、悲劇的な歴史や信教の自由に思いを巡らせるだろう。

 資産の多くは離島など過疎地にある。登録が信仰の場を守り、歴史を後世へ伝える契機となるよう、知恵を絞ってもらいたい。

 国内の世界遺産は22件となる。世界では千件を超え、新たに登録されるには、複数の遺跡をつなぐ物語性といった工夫が必要だ。

 今回は推薦を一度取り下げ、ユネスコの諮問機関の助言に従って、潜伏の歴史に絞ってアピールし直したことが評価された。

 北海道など4道県が世界遺産登録を目指す「北海道・北東北の縄文遺跡群」は今月、国内推薦を目指し、6度目の挑戦を行う。

 従来は他地域との差別化に苦心してきたが、「集落の変遷」を切り口に17遺跡を整理し、1万年にわたって平和が続いたこの地域ならではの物語を訴えるという。

 朗報を待ちたい。

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