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先祖供養の儀式「イチャルパ」10年

標津アイヌ協会 小川会長に聞く

 【標津】標津アイヌ協会(小川悠治会長)は、町ポー川史跡自然公園にある伊茶仁(いちゃに)カリカリウス遺跡でアイヌ民族伝統儀式「イチャルパ」を6月17日に行い、1789年のクナシリ・メナシの戦いで処刑されたメナシ地方(現在の標津町と羅臼町周辺)のアイヌ民族23人を供養した。2009年に始まり、今年で10回目。小川会長(71)に節目の年を迎えた思いや今後の展望を聞いた。(椎葉圭一朗)

 ――標津のイチャルパは今年10回目を迎えました。

 「始まりは13年前、道アイヌ協会の加藤忠理事長が標津を視察に訪れた際に、『200年以上も先祖を供養してやれないのはかわいそう。何とかできないか』と提案されたのがきっかけでした。悲しい歴史のほかに文化が残っていない標津のアイヌが独自で儀式を行うのは難しく、正直、ここまで続くとは思いませんでした」

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各地の仲間の支援に感謝

 ――それでも続けられたのはなぜですか。

 「道内の他のアイヌの支援のおかげです。初めてのイチャルパでは釧路市阿寒湖温泉の故秋辺今吉エカシ(長老)が祭司を務めてくださり、儀式の進め方などを一から教わりました。隔年での開催に切り替えようと考えていた5年ほど前には、阿寒アイヌ協会の広野洋会長から『1度中断すると再開するのは厳しい。応援するから毎年開きましょう』と力強い言葉を頂きました。今年も胆振や日高地方などから参列がありました。多くの人の協力があって迎えられた10年です」

継承へ若手の参加が課題

 ――次の10年に向けて課題は。

 「標津アイヌ協会は現在会員が75人、平均年齢は59歳と高齢です。若い人で儀式を進められる人材はほとんどいません。他地域に協力をお願いしての開催は今後も続きますが、次世代へつなげるためにも、若手に積極的な参加を呼びかけています」

 ――10月には標津で初めてのアイヌ民族文化祭が開かれます。

 「江戸末期に根室海峡沿いを4度探査し、その後明治政府の役人となった松浦武四郎が北海道を命名して150年の記念事業です。その開催地に標津が選ばれたのは感慨深いこと。アイヌを案内人に武四郎が巡ったコタンやチャシを巡るツアー、武四郎を軸とする幕末のメナシを彩る人物についての講演会などを予定しています。地元の人が地域の歴史を理解する場になればと思っています」

地域の子ども毎年見学

 標津のイチャルパでは、「全道的にも珍しい」(小川会長)という、地域の子どもたちによる儀式見学が毎年行われている。

珍しい取り組み

 町内では、地域住民でつくる実行委の主催で、地元小学生が町生涯学習センターに寝泊まりして規律や協調性を学ぶ「通学合宿」を2004年から行っている。イチャルパの見学は11年に合宿のプログラムに取り入れた。

 見学前にはアイヌ文化学習も行われ、町教委の学芸員がスライドを使ってアイヌ文化を解説。これまで延べ128人が参加し、続縄文時代や擦文時代など道内には本州とは異なる時代区分があること、自然と共生するアイヌ文化では動物の習性や植物への深い知識が発達したことなどを学んだ。

一緒に輪踊りも

 今年は通学合宿が一時休止となったが、町生涯学習センターの講座「標津を知り隊」の活動でイチャルパ見学を継続。小学生11人が参加し、見学後は阿寒アイヌ民族文化保存会の会員らに交じり、リズムや手の動かし方を教わりながらアイヌ民族の古式舞踊「輪踊り」を一緒に踊った。

 標津小6年の船山慎ノ介君(11)は「踊りは面白かった。標津でこんな儀式が開かれているということを友達にも教えてあげたい」と笑顔だった。小川会長は「文化を失ったわれわれは、地域や子どもたちと一緒に学びの姿勢でイチャルパを続けなければいけない」と話している。(椎葉圭一朗)

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