PR
PR

<訪問>「傍流の記者」を書いた 本城雅人(ほんじょう・まさと)さん

新聞社内の争い 6人の視点で

 アイドルグループにセンターがあるように、集団には中心があり、組織には本流がある。組織を動かす本流を目指す者、達観する者、あきらめきれずもがく者。本流と傍流の複雑な人間関係、主導権争いの舞台を新聞社に選んだ。著者は元産経新聞、サンケイスポーツ記者だ。毎日の紙面内容で、各社の勝負がはっきりする新聞業界。「勝った人間、負けた人間がはっきりしている。組織小説を書く際、新聞業界は面白い」

 舞台の東都新聞は政権寄りの論調で知られる全国紙。社会部のエースと期待された6人の同期記者は40代に差し掛かり、それぞれの分野で奮闘している。上司からの圧力や同期とのあつれき、部下の反発に加え、妻との関係など苦悩の種は尽きない。さらに、政権のスキャンダルを巡り、政治部と社会部の報道姿勢の違いが激しい社内対立を生み出す―。6人の視点で6話を描いた。

 「組織の中で個性的な人間がぶつかりあうのを、短編のような形で書きたかった」。思う道を強引に進む者、協調性を重んじる者、登場人物の個性は豊かだが、それぞれの得意分野の取材現場の描写も細かい。新聞社内の主導権争いも生々しく描いた。「警察、調査報道、遊軍など複数の新聞社の人から実際に話を聞いた」。作中、部署間の若手有望記者の争奪戦で、プロ野球のドラフト制のように指名優先順を決めた場面があるが、これはとある全国紙で実際に行われた例だという。

 政権寄りの姿勢を見せ、スキャンダルに懐疑的な政治部に対し、スキャンダルを追及し、報道を迫る社会部。「どちらが悪い、というのではなく、二つの正義がぶつかるのが面白い」と話す。作中、こう表現した。「新聞社は権力を見張るだけが役割ではない。この国を良くするにはどうすべきか考察し、論を発信する役目もある。前者の中心になるのが社会部なら、後者は政治部の仕事だ」

 1965年生まれ。1年間の産経新聞勤務を経て、サンケイスポーツへ。19年の勤務の大半をプロ野球取材に費やした。ヤクルト担当時、監督だった野村克也さんと2人で、出場を逃した日本シリーズを観戦したのが思い出だ。40歳でデスクになり、現場から離れたことで「今まで自分が得た知識を、フィクションで生かせないか」と執筆活動に入った。

 今作は24作目。18日に選考が行われる直木賞候補に初めて選ばれた。「小説は正解がない、人の評価で決まる採点競技に近いと思う。遠回りしたかもしれないけど、ちゃんとした方向には来ているのかなって」。スポーツに例え、控えめに喜んだ。

東京報道 原田隆幸

どうしん電子版のご案内
北海道新聞 購読の申し込みはこちらから
新聞配達スタッフ募集
ページの先頭へ戻る