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就職の「内々定」と「内定」 契約成立の有無で判断

 2019年春卒業予定の大学生らに対する日本経済団体連合会(経団連)加盟社の選考活動が1日に解禁され、企業から「内々定」を得る学生が増えている。その経団連の正式な「内定」解禁は10月1日以降だ。大手に限らず中堅・中小企業も出す内々定と内定。その違いはどこにあるのだろうか。

 「多くの企業が現時点で出しているのは内々定。内定と法的性質は異なる」。日本ワークルール検定協会(東京)の会長で、北大名誉教授の道幸哲也(どうこうてつなり)さん(70)は強調する。

■法律で明確な区別なし

 道幸さんによると、内々定と内定は法律で明確に区別されていないが「労働契約が成立しているかどうかで違いが判断できる」という。内々定は「内定を出す」という約束で、学生と企業の間で労働契約が正式に結ばれていない「仮契約」のような状況だ。従って学生は基本的には自由に辞退できる。一方、企業は内々定を取り消しても法的には原則として責任を問われない。ただ、過去には訴訟例があり、内々定でも実質的に「決定」と受け止める見方が多いだけに、取り消しは相当なリスクを伴う。

 内定は学生と企業が労働契約を結んだ状態を指している。どの時点で内定に当たるかは就職先で異なるが、一般的には内定通知を受けて承諾書・誓約書を企業に提出した時や、内定式への出席が目安となる。承諾書がない場合は、内定通知書のみで内定とする企業もある。このほか、入社日や職種が具体的に示されて成立する例も多い。

 内定により労働契約は成立するが、民法では雇用に関する契約の解約は自由なため、学生は内々定と同じく辞退は原則自由とされている。その場合、遅くても採用日(入社日)の2週間前の予告が求められる。

■企業に働く強い拘束力

 これに対し企業には強い拘束力が働き、内定取り消しは解雇とみなされる。内定通知書に記載した取り消し条件(留年や経歴詐称など)に学生が該当した場合などを除いて取り消せず、悪質な企業は厚生労働省が社名の公表もする。裁判でも争われており、1979年には入社直前に学生の内定を取り消した企業に対し、最高裁が内定は労働契約に当たると判断し、取り消しを不当と結論付けた。

 このほか、企業が学生に対して就活の打ち切りを迫る「就活終われハラスメント(オワハラ)」も、憲法の職業選択上の自由に反する違法行為だ。

■辞退するなら速やかに

 こうしてみると、雇用関係では弱い立場にあるとみなされる学生の自由度が法的には高いものの、就職情報会社ディスコ札幌支社の菅原佳江支社長は「辞退は企業の採用計画への影響が大きく、辞退の仕方によっては出身校の評価を下げかねない」と指摘。内々定後に連絡が取れなくなる学生もいると明かし、「辞退する場合や入社を迷っている場合は速やかに企業側に伝えて」と話す。

 学生が内定に関するトラブルを防ぐには企業とのメールを保管したり、文書を一般書留にして配達証明付きで郵送したりする方法がある。問題が起きた場合は、法テラス札幌(電)050・3383・5555(平日午前9時~午後5時)や、北海道労働局「札幌新卒応援ハローワーク」(電)011・233・0222(平日午前10時半~午後7時)に相談すると良い。(道新夢さぽ取材班 木村直人)


 <ことば>民法627条1項 「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する」


 <ことば>労働契約法16条 「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」


 <ことば>憲法22条1項 「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する」

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