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<書評>日本の分断

吉川徹著

学歴による格差 解析であらわ
評 佐藤直樹(九州工業大名誉教授)

 日本が極端な学歴社会であることは、みんな薄々(うすうす)感づいてはいた。ところが学歴による分断を口にすることは、これまでタブー視されてきたらしい。

 本書は、最新の社会調査にもとづき、現役世代を「若年(20~30代)/壮年(40~50代)」「大卒/非大卒」「男性/女性」によって八つのグループに分け、年収、職業、結婚、居住地、社会意識などについて詳細に解析。その結果いまや日本では、大卒/非大卒という学歴差によるロコツな分断線が姿をあらわし、団塊の世代の退出後は、この分断がさらに深まるという。

 この8グループのうち、圧倒的な勝ち組は壮年大卒男性。逆に最も不利な生活を強いられているのが、「拍子抜けするほどおとなしく、活気と意欲に乏しい」若年非大卒男性。本書は、現役世代の11.2%を占める彼らを「レッグス」(軽学歴の男たち)と命名。これまで日本のモノ造りや社会インフラを根底で支えてきたのに、今後社会経済的地位のさらなる不安定化に直面する彼らに、新たな政策的支援が必要だという。

 思うに、学歴分断を語ることがタブー視されてきたのは、社会の側に能力や才能の差を認めない「人間平等主義」の意識があるためである。能力差をひけらかすことは「上から目線」だとして嫌われ、学歴などの身分差はつねに隠蔽(いんぺい)される。

 いま結婚は、ほぼ7割が同じ層同士の「学歴同類婚」だそうだ。大卒は大卒としか付き合わないから、非大卒の人々の生活には想像が及ばない。現役世代の約半分が非大卒であるにもかかわらず、学歴分断線の両側でお互いの顔がよく見えないのだ。

 どうすればよいのか?

 本書が読者に勧めているのは、レッグスに思いをはせ、街に出て日本社会をあらためて見渡すことである。すると、たしかに道で何げなくすれ違う人々が、なぜかべつな風景に見えてくる。B・ブレヒトの<異化作用>といったところか。これは私にとって、ちょっと希有(けう)な体験であった。オススメの一冊である。(光文社新書 929円)

<略歴>
きっかわ・とおる 1966年生まれ。大阪大大学院教授。著書に「学歴分断社会」など

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