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初の米朝首脳会談 非核化への新たな一歩に

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 トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長がきのう、シンガポールで会談した。

 朝鮮戦争(1950~53年)は休戦協定が結ばれているものの、法的には戦争状態が続いている。その解決の鍵を握る両国トップによる初の会談である。実現した歴史的意義は大きい。

 発表した共同声明には、米国が北朝鮮の体制を保証し、北朝鮮は完全な非核化に断固として取り組むことなどが盛り込まれた。

 70年に及ぶ敵対関係を解消し、新たな米朝関係を結ぶことになるという。

 とはいえ、その中身はまだ具体的ではない。完全な非核化が「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」(CVID)を意味するのかをはじめ、不透明な部分が数多く残された。

 非核化の方法や期限などは今後の協議に委ねられる。

 両首脳はさらに会談を重ねるという。トランプ氏は金氏をホワイトハウスに招き、自身も適切な時期の訪朝に意欲を示した。

 大切なのは、さらなる対話を通じて信頼関係を構築し、非核化の流れを確実にすることである。

 今回の首脳会談はそのための第一歩と位置付けられよう。

■曖昧さを残した合意

 合意はできても、履行は困難を伴う―。これが、四半世紀にわたる北朝鮮との非核化交渉を通じた国際社会の共通認識である。

 北朝鮮は見返りの経済支援を受けながら、合意内容を破棄して核・ミサイル開発を続けてきた。それが昨年の軍事的な緊張につながった。

 同様の過ちを繰り返してはならない。それを防ぐための大原則がCVIDだった。

 ポンペオ米国務長官も「朝鮮半島のCVIDは米国が受け入れる唯一の結果だ」と強調してきた。

 ところが、共同声明にその言葉はなかった。トランプ氏は「検証をしっかり実施する」と述べるにとどめた。最終目標がCVIDであることを改めて確認しなければならない。

 北朝鮮が保有する核兵器、弾道ミサイルを廃棄するか、国外に持ち出す。国際原子力機関(IAEA)が徹底検証し、二度と核開発できないようする。

 この作業をいつ、どのような手順で進めていくか、明確にする必要がある。

 トランプ氏は、対話継続中は米韓合同軍事演習を中止する意向を明らかにした。体制を脅かす行動は避ける配慮とみられる。

 一方で北朝鮮に対する制裁は当面、維持する考えも示した。トランプ氏の姿勢も定まらない部分がある。

 肝心なのは体制保証がCVIDの実現と表裏一体であることを、北朝鮮に念押ししていくことだ。

 北朝鮮は国際社会がつねに疑惑の目を向けていることを意識し、率先して非核化への行動を示すことが求められる。

■「戦争終結」へ道筋を

 共同声明には、米国と北朝鮮が「朝鮮半島において持続的で安定した平和体制を築くため共に努力する」ことも明記した。

 先の南北首脳会談で合意した「板門店(パンムンジョム)宣言」に沿って、朝鮮戦争の年内終結を南北間で宣言する。その上で米国、中国を交えて平和協定の調印を目指すことを表明したと言える。

 朝鮮戦争では、数百万の死傷者と1千万人の離散家族を生んだ。

 世界で唯一残されていた冷戦構造は、早期に解消されなければならない。

 かといって、単に戦争を終結させるだけでは、北東アジア情勢の安定にはつながらない。

 米朝ともに内向きのアピールに終わらせてはいけない。

■拉致解決へ重要局面

 日本人拉致問題についてはトランプ氏が金氏に提起した。トランプ氏は記者会見で、「(北朝鮮が今後)取り組む」と述べた。

 安倍晋三首相が再三、トランプ氏に会談で取り上げてもらえるよう要請した結果だ。

 首相は米朝会談を受けて「しっかりと北朝鮮と向き合い、2国間で解決していかなければならないと決意している」と強調した。

 きのう夜にはトランプ氏と電話会談し、今後の対応について協議した。

 問われるのは日本政府の行動だ。これまでの圧力一辺倒でその糸口をつかめるのか。

 高齢化する被害者家族からは「みんなが元気なうちに一刻も早く再会したい」との期待が寄せられている。

 首相はこの言葉の重みを受け止めるべきだ。

 北朝鮮は拉致問題だけでなく、国内の深刻な人権問題が指摘されている。そうした問題の解決に積極姿勢を示さなければならない。

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