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疑わしきは…

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8月18日から1日も休みなし。連日、午前8時半すぎから深夜11時ごろまで―。1966年に静岡県で一家4人が殺害された強盗殺人事件で、袴田巌さんが逮捕された際の取り調べ状況だ▼逮捕から20日目、否認していた袴田さんは「自供」を始める。だが、取り調べ方法も異様なら、自白調書45通中44通は証拠能力がないとして、裁判所が排除したのも極めて異例だ▼解せないのは、これほど任意性に疑問の残る取り調べだったのに、死刑判決が下されたこと。他の証拠にも多くの不自然な点が残るにもかかわらず、である▼東京高裁はきのう、静岡地裁が出した再審開始の決定を取り消した。その決定の根拠となった、犯人のものとされる衣類に残る血液のDNAが、袴田さんと一致しないとする弁護側の鑑定結果は信用できないという理由だ。けれど、逆に袴田さんとDNAが一致したわけでもない▼数々の証拠が脆弱(ぜいじゃく)であることは変わらない。弁護側が主張した捜査側の証拠捏造(ねつぞう)の疑いも払拭(ふっしょく)されたとも言い難い。再審も「疑わしきは被告人の利益に」が原則なら、速やかに裁判をやり直すのが筋ではないか▼82歳の袴田さんは48年に及ぶ拘禁生活で精神を病み、意味の通じない発言も増えている。きのうも高裁の決定に「うそ言ってるだけだよ」と語っていた。理解できなかったのか、それとも絶望なのか。重い言葉は司法に響いているか。2018・6・12

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