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「袴田」再審棄却 理解に苦しむ高裁決定

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 1966年に静岡県で一家4人が殺された事件で死刑が確定した袴田巌さん(82)の第2次再審請求で、東京高裁はきのう、再審開始を認めた静岡地裁の決定を取り消し、請求を棄却した。

 地裁は袴田さんや被害者の血痕が付いたとされる衣類について、弁護側のDNA型鑑定の結果、袴田さんの着衣であることに疑問を示し、再審開始を命じていた。

 一方、高裁は「地裁は鑑定の手法を過大評価している」などと批判し、再審を始める明白な証拠とは認めなかった。

 再審制度の本来の目的は誤判からの救済、名誉回復である。

 地裁の決定から4年。証拠と法に照らし、審理を重ねた結論だとしても、再審請求審で求められる「無罪の発見」にどこまで迫ろうとしたのか、大いに疑問が残る。

 弁護団は特別抗告する方針だ。「死刑事件」に決して誤判は許されない。最高裁には改めて綿密な審理を求めたい。

 地裁と高裁の判断を分けたのは、科学鑑定に対する見解や姿勢の違いと言えよう。

 地裁はDNA型鑑定によって示されたいくつもの「矛盾」を袴田さんに有利な証拠ととらえ、問題の衣類は警察による証拠捏造(ねつぞう)の疑いがあるとさえ言及した。

 逆に、高裁は、このDNA型鑑定について「新規の手法で、一般的に確立した科学的手法とは認められない」と判断している。

 科学鑑定の進歩で有罪判決を覆す新証拠が発見される現代において、消極的すぎないだろうか。

 鑑定の手法自体は否定されたものの、「では、血痕付きの衣類は誰のものか」という争点への明確な答えはうかがえない。

 そもそも「袴田事件」は、警察が自白を強いた疑いが強く、証拠の全体的な構造も盤石とは言い難い。かつて死刑判決を言い渡した元裁判官の一人は「無罪の心証を持っていた」と告白している。

 最高裁は「白鳥決定」で、「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の原則は再審にも適用されると判示している。

 高齢の袴田さんの健康状態を考え、死刑や拘置の執行を停止するのであれば、速やかに再審公判に審理を移すのが筋だろう。

 最近相次いでいる再審開始決定を巡っては、検察の異議申し立てを認めるべきではないと指摘する専門家も少なくない。

 証拠開示に後ろ向きな検察の姿勢も含め、再審制度のあり方に関する議論を深めたい。

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