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強制不妊訴訟 国はあまりに不誠実だ

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 国に人生を奪われた人たちに対し、あくまで責任を回避しようとする姿勢には驚きを禁じ得ない。

 旧優生保護法(1948~96年)の下で知的障害を理由に不妊手術を強いられたとして、宮城県の60代女性が国に損害賠償を求めている訴訟で、全面的に争う国側の主張が明らかになった。

 原告側は「憲法が保障する自己決定権や法の下の平等に反する」として、救済や立法措置を怠ったのは違法と訴えている。

 これに対し、国側は、被害補償を求める場合は国家賠償法があり、立法行為は国会の裁量に委ねるべきで「補償制度を作る義務はない」と反論するという。

 政府、国会いずれの不作為も違法ではないというのである。

 これまで「当時は合法だった」と責任を否定してきた国が、今ごろ国賠法で救済できたと主張するのは、明らかに矛盾している。

 国会では、超党派議連や与党のチームが、救済に向けた議員立法作成に取り組んでいる。その流れにも水を差しかねない。

 国は、深刻な人権侵害を起こした事実を直視すべきだ。

 全国で1万6475人(道内2593人)が手術を強いられた。

 これまで札幌、仙台、東京の各地裁で計4人が国を訴えている。被害者の心の傷は大きく、今年1月に宮城県の女性が提訴するまで、声を上げられなかった。

 そんな事情を抱える被害者に対し、国賠訴訟を起こせばよかったと言わんばかりの態度を取るのは無神経で不誠実極まりない。

 2004年の国会答弁で、当時の坂口力厚生労働相は「(強制不妊手術の)事実を今後考えていきたい」と救済の必要性に触れた。

 この答弁を受け、原告側は「適切な措置をとる必要があった」と主張したが、国はやはり国賠法を理由に否定している。

 原告弁護団が「手術の違憲性には全く反論せず、小手先の答弁に終始している。反省する姿勢のかけらも見えない」と批判するは当然だろう。

 強制不妊手術について、3月の衆院厚生労働委員会で、加藤勝信厚労相は「与党チーム、議連等の議論も注視をし、必要な対応を図らせていただく」と述べた。

 必要な対応がこれなのか。

 被害者は高齢化しており、裁判で長引かせるのは、避けなければならない。

 国は原告に謝罪し、救済を急ぐべきだ。議員立法作成にも協力する必要がある。

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