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<採用戦線異状あり>2 人材争奪 札幌狙い撃ち

 「食品に携わる仕事がしたい方、待っています!」。JR札幌駅近くで5月下旬に開かれた企業セミナー。集まった学生に熱っぽく呼びかけていたのは、首都圏に食品スーパーを展開するロピア(神奈川県藤沢市)の採用担当者だ。

■大学の集積に着目

 同社の店舗は北海道になく、今後、出店の予定もない。縁もゆかりもない札幌で採用活動を行うのは「関東地方だけで必要な人数を採用できないから」。今春の採用実績は129人だが、来春は150人に増やしたい。企業の成長には人材確保が必須だ。見定めたのが、多くの大学が集積する札幌の新卒市場だった。

 本州に拠点を持つ企業が道内で採用活動を本格化したのは、人手不足感が鮮明になった3~4年ほど前。学生に人気の有力企業も多い。札幌での総合職採用を進める野村総合研究所(東京)の石田晴海採用課長は「北大など札幌の大学には本州出身の学生も多い。転勤をいとわない総合職志望の学生を多く採用できるメリットがある」という。

 「大学の集まる札幌は、短期間で多くの学生と効率よく会える場所」(名古屋の外食チェーン、ブロンコビリー)なのも魅力のひとつ。道内拠点のない企業も学生への攻勢を強める。

 その結果、道内の大学生の就職先に占める地元企業の割合は減少傾向にある。今春は60・4%と前年に比べ1・6ポイント減少した。

 「(学生を)道外企業に抜き取られている」。サッポロドラッグストアー(札幌)の佐々木大将採用担当マネジャーは危機感をあらわにする。「ならばこちらも」と同社は2年前、東京での採用活動を開始した。

 道内では知名度抜群のサツドラだが、東京での存在感は大きくない。5年以上前にも東京で選考したが、実績が上がらず中止した経緯もある。今春入社した54人のうち東京選考は2人だけだが「(学生との)出会いの場を広く持ち続けるのは意味がある」という。

 中道リース(札幌)の関崇博取締役は「道外企業の進出が、道内の採用戦線を変容させた」とみる。かつては企業説明会に200人の学生が集まったが、今はせいぜい50人。学生が集まらず、東京と仙台でも採用活動を始めた。道内と縁のない学生の採用も増やしており、現在の採用活動から東京でもインターンシップを始めている。

■待遇の格差で不利

 住宅資材卸のキムラ(札幌)も本州での人材採用を始める見通しだ。数だけでなく人材の質も重視するが、東京での採用活動のハードルは待遇の格差。八代紀裕管理部部長は「初任給の水準が東京の企業と比べると見劣りする。引き上げも考えないといけない」。

 道内で守勢に立たされ、道外採用増の見通しも立たぬ中、新たな活路を求める企業もある。給与計算受託のエコミック(札幌)は、留学生に焦点を当てた。中国に子会社を持つ縁もあり、過去3年で中国人留学生7人を正社員採用した。

 だが、昨春入社した留学生出身の4人は、全員が1年ももたずに退社。「成長力の大きな中国企業にみんな移ってしまった」(総務・人事グループ)。

 人材争奪戦は国内だけでなく、海外にも広がる。その渦に道内企業もいや応なく巻き込まれ始めた。

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