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新千歳、保安態勢どう改善 3月に刃物持ち込み騒動 初動に難、国交省が新訓練

 【千歳】新千歳空港で保安態勢への懸念が生じている。発端は3月、テナント従業員の通報で国内便4機が出発を止められ、約780人の乗客が保安検査をやり直した「刃物持ち込み騒動」。通報から運航停止まで約40分かかり、通報自体が目撃の直後でなかった可能性もあり、初動に問題を残した反省から国土交通省は新たな訓練を始めた。増え続ける空港勤務者への保安教育の徹底が求められている。

 3月11日の午後8時55分ごろ。新千歳空港の南端にある千歳署空港警備派出所の電話が鳴った。「刃物らしきものを持つ人を見た」。保安検査場の内側の「保安区域」にある店舗従業員からの通報だった。

 同じ系列の店は検査場の外にもう1店あり、派出所の警察官はそちらに向かう。通報した従業員とのやりとりで、正確に伝わらなかったとみられる。警察官が通報者のいる店に駆け付けたのは約30分後。すぐに国交省へ連絡し、出発準備中の4機が止められた。

 従業員は取材に「店内で食事する男性のテーブルに先のとがった物が見えた。たぶん、午後8時半ごろだったと思うが…」と振り返る。午後9時の閉店準備に追われ、すぐに通報できなかったという。これに加え、通報後の対応も遅れたことで、再検査しないままの乗客約140人を乗せた羽田行きの1機が午後9時26分に離陸した。

 ある航空会社幹部は「不審物を見たらすぐに通報するのは保安区域で働く者の大前提」と話し、「通報を受けた後の対応の遅れもあり、失態といえるのではないか」。

 4機に搭乗予定の約780人に対する保安検査のやり直しや、最初に乗客が保安検査場を通過する際の録画画像でも刃物は見つからなかった。新千歳空港の保安に携わる関係者の一人は「実際に刃物があった可能性はかなり低いが、通報後に再検査しないまま1機が離陸してしまった。万が一、刃物が持ち込まれていたら最悪の場合、ハイジャックにもつながりかねなかった」と危機感を表す。

 再検査なしで飛び立った1機は午後10時46分、羽田空港に着いた。乗客たちは、普段通り持ち物検査を受けず空港を後にした。(高木緑)

■「通報タイミング 明確に教わっていない」 空港勤務8000人、教育課題

 増え続ける旅客数に伴い、新千歳空港の勤務者数も右肩上がりで伸び、近く公表される今年4月現在の統計では約8千人に上るとみられる。今回の騒動が起きた「保安区域」では、ここ2年間で飲食店など5店が新たに出店、今夏までにさらに2店増える見通し。ただ、これらの勤務者がどんな保安教育を受けているかは明らかにされていない。

 結果的に刃物が見つからなかった今回の騒動では通報内容の信ぴょう性を問う声も出たが、新千歳の保安関係者は「保安の知識があるという前提で働く区域内の勤務者からの通報だから、確度が高いと判断するのは当然だった」と説明する。

 国交省新千歳空港事務所によると、保安区域での航空会社や飲食店の勤務者は、定期的に保安教育を受ける。それぞれの企業の保安責任者が国交省から教育を受け、社内に広める「波及教育として」(空港事務所)従業員に伝えている。空港事務所は保安上の理由から「教育内容の詳細は答えられない」という。

 一方で、保安区域で最近働き始めた一人は「保安教育は受けたが、何が不審物に当たるかや、通報のタイミングについて明確には教わっていない。常識で判断している」と明かす。別の一人は「教育を受けた人間の意識にどれほど根付いたかを探るのは難しいのでは」と話す。

 騒動後に空港事務所が始めた新たな訓練は、不審物の発見通報を事務所が受け、その内容を正確、迅速に関係機関に伝える内容で、4月から毎月1度行っているという。公開はしていない。

 元日本航空社員として新千歳での勤務経験がある崇城(そうじょう)大(熊本市)の池辺洋一郎教授(航空保安)は「2020年に東京五輪を控え、警備が厳重な羽田や成田を避けて地方の大空港がテロの標的になる可能性も考えられる。新千歳でも国交省をはじめとする関係機関が危機感を持ち、保安態勢で連携していくべきだ」と指摘する。

■2年前 検査すり抜け搭乗も

 新千歳空港の保安検査を巡っては一昨年8月、女性客が金属探知機の検査を受けずに飛行機に搭乗し、乗客約千人の検査のやり直しが行われるトラブルが起きている。女性客は当時、保安検査場で検査員が目を離した隙に探知機横の通路を通って保安区域に入り、搭乗口で「チケットをなくした」と申告。航空会社は本人確認のみで搭乗を許可し、女性客はそのまま機内に乗り込み、飛行機は出発した。

 この事態を受け、国土交通省は《1》保安検査場の金属探知機横の通路を通れないようにする《2》乗客が保安検査場を通る際の監視を強化する―などの再発防止策を講じている。

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