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<ガバメント北海道 舞台裏を読む>新幹線 市とJRに残る火種

 「札幌市と対立して大東(おおひがし)案を押し通したJR北海道が、再開発のパートナーになる可能性があるとは」。市有地「北5西1街区」に高層ビルを建てる市の構想に、JRが参入の検討を始めたことに対し、市幹部は渋い表情だ。

 北海道新幹線の延伸に関連し、新幹線札幌駅ホームをどこに設けるかが、3年近い迷走を経てこの3月、現駅の200~300メートル東に造る「大東案」で決定された。現在は駐車場がある北5西1街区は、新幹線駅前の超一等地となる。問題の決着直後、JR幹部は「都心まちづくりに貢献でき、収益性も高いビジネスモデルを提案したい」と周囲に意気込みを語ったが、札幌市にとって、JRの参入意向は想定を超える動きだった。

 新幹線駅の位置決めでは、市は今の札幌駅に併設する「現駅案」を基に都心再開発の構想を温めていた。そこへJRが現駅案との工費の差額75億円の負担を申し出て大東案が優勢に。JR側は水面下で国会議員や市議に根回しもし、市が異を唱える余地がなくなった。秋元克広市長は「物事を詰める過程を急がなければ」と切り替えたが、メンツをつぶされた市役所内にはJRへの不信感が残る。

 再開発構想の前提となる新幹線駅自体の造りをどうするかでも、市とJRの間に火種がくすぶる。北海道商工会議所連合会の岩田圭剛会頭は駅舎を巡って「動く歩道など不便がない設備が必要」と話すなど、経済界に期待が広がる中、市は問題決着後、JRから「現段階で想定していない設備は、市の費用負担だと伝えられた」(市幹部)からだ。

 市長選を約1年後に控え、経済界の要望は市長も重視したいところ。ただ、鉄道建設・運輸施設整備支援機構が行う建設事業のうち市内分の建設費は約2100億円と試算され、市の負担は約350億円。さらに増えれば市民の反発が出かねず、市幹部は「JRとけんかする覚悟でやり合う時期が来た」と緊張している。

 市は冬季五輪・パラリンピックの招致目標を2026年から30年に変更した場合、札幌延伸開業を29年中に早めるよう国に求める方針。JRは新幹線札幌駅の完成を29年末と予定しており、五輪に合わせるにはJRと工事前倒しの交渉などを進めねばならず、市OBは「JRとの付き合い方が問われる」と身構える。

 JR北海道の島田修社長は5月16日の記者会見で「五輪が決まれば、間に合うよう全面的に協力する」と話し、市に協調姿勢だ。ただ「試験運転や検査も必要。工程感を踏まえて議論しなくては」と、期待感が高まる現状にくぎを刺した。

 今後は予算獲得のための与党政治家への働きかけや、トンネル掘削土処分を巡る市民説明も不可欠。秋元市長は「時間がない中で物事を決めると問題になる。十分な時間を持って協議する必要がある」とも話す。新幹線関連の課題は“安全運転”も必要で、市は難しい対応を迫られている。(報道センター 十亀敬介)

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