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<第4部 幌別かいわい>6 正統派のバー 自衛隊で腕磨く 食も充実

 夜のマチを探検。一見怪しげな店は、体に優しい?大人の隠れ家だった。

 幌別駅西口から歩いて3分。カラオケの歌声がドアから漏れるスナックの通りを抜け、路地を曲がると、ピンクのネオンサインが光る「バー司」(登別市中央町2)が見えてくる。

 勇気を出してドアを開けると、静かにグラスを傾ける正統派の“大人の空間”が広がっていた。

 2016年3月、マスターの須藤祐司さん(55)が「登別に静かに飲める空間を作り、お酒の文化を広めたい」と開店した。ただ、そこまでの経歴が異色だ。

 生まれも育ちも小樽。父親から「日の丸の下で働くのは安心だし尊いこと」と諭され、地元の北照高卒業後、陸上自衛隊に入った。

 幌別の第13施設群を皮切りに白老、千歳の駐屯地を回り、48歳で再び幌別に戻ってきた。その間、ほとんどが業務隊の調理担当。千歳と2回目の幌別では調理長も経験した。

 バーへの思い入れは、20歳のころ芽生えた。小樽に帰省した際、父親に連れられ老舗カクテルバー「ドンファン」に行った。ジンにベルモットを合わせたカクテル「マティーニ」を一口飲んで、とりこになった。

 「違うお酒を混ぜることで、全然違う味に仕上がる。まさに大人の世界だと思った」と懐かしむ。

 時間が許す限りいろいろなバーに通い、ドンファン店主の山下健一郎さんとも交流を続けた。勤務後にカクテルづくりの練習に励み、25歳でバーテンダーの資格も取得した。

 自衛隊を53歳で定年になると同時に、貯金と退職金を合わせた1千万円をつぎ込み、念願の店を開いた。

 カウンター越しの棚には、400種類以上の酒が並ぶ。カクテルのレパートリーは、メニューにあるだけで41種類。頭の中には200種類は入っている。

 おすすめはドンファン直伝のマティーニと、今の季節なら自家栽培のミントを使ったモヒートという。

 ただ、バー司の真骨頂はここから。1800円のチャージに含まれる料理の量が半端じゃない。地元の魚介類で作るパスタや、チカの南蛮漬けなど、季節の素材を中心に手の込んだ料理が次々に出てくる。

 須藤さんは「自衛隊で調理長をやっていたせいか、おいしそうにたくさん食べてくれる姿が見たくて、つい」と照れる。

 さらに驚かされるのが、専門店顔負けのラーメン。一押しは「しじみ塩」で、常連客の多くがシメに頼む。ワンドリンクとセットで1500円だ。

 夜も更けたひととき、ほろ酔い加減の男たちが、カウンターに並んでラーメンをすする。客の一人は「シジミなら肝臓にいいし、夜に食っても母ちゃんに怒られないかな」と、にやりと笑った。

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