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宝物

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西欧社会に子どもという概念が生まれたのは17世紀以降だという。6、7歳から社会に出て、働くことを強いられた当時の社会状況を反映しているらしい。子どもは、「小さな大人」だったのである▼これに対し、日本では昔から大切な存在だったと、小樽出身の原田貞義・東北大名誉教授は、共著「歌ことばの辞典」で指摘する。一例として、万葉集の「銀(しろがね)も金(くがね)も玉も何せむにまされる宝子にしかめやも」(山上憶良)を挙げる。銀も金も玉も子どもには及ばない、という意味だ▼その「宝物」が悲劇に巻き込まれた。新潟の小2女児が殺害された事件だ。女児は将来「デザイナーになりたい」と夢を語っていた。桜の花びらを集め「ママのお土産にする」と話す優しい子だったのに▼死体遺棄容疑で逮捕された男は、近所の住人だった。いわば地元の「おじさん」だ。子どもを見守り、助ける立場ではないか。それが凶行に及んでいたとすれば、あまりにむごい▼「遊びをせんとや生まれけむ、戯(たわぶ)れせんとや生(む)まれけん、遊ぶ子供の声聞けば、我(わ)が身さへこそ揺(ゆる)がるれ」。梁塵秘抄ではこう歌われる。遊ぶために生まれてきたのか、戯れるために生まれてきたのか。子どもが遊ぶ声を聞くと感動で体が動きだす、と▼もっと遊びたかっただろう。いろいろな経験をしたかったに違いない。無限に広がる子どもの未来を、力ずくで奪った犯行が憎い。2018・5・16

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